京都の平瀬家本を買う 村口四郎 【諸名家の宝庫を渉猟する3】

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  • 京都の平瀬家本を買う 村口四郎 【諸名家の宝庫を渉猟する3】

    井上(周一郎、本郷井上書店) それだけの点数だと、にわかに引き受けられたのでは、大変だったでしょう。 村口 店には父の代から引きつづいて、二十年以上も勤めてくれた番頭がいましてね。池の内といいましたが、それが父の仕込みで、万事心得ていて、日常の仕事は、そつなくやってくれていました。私は棚の本なんか、 […]

  • 井上書店で六ヶ月間修業 村口四郎 【諸名家の宝庫を渉猟する2】

    反町 そういういきさつで、本郷の井上書店に、しばらく世話になっておられたんですね。 村口 多分、井上さんも御迷惑だったでしょう。店員としては、もう年をとっているし、古本のことは何も知らないし……。 反町 しかし井上さん(先代喜多郎氏)は当時村口さんと、とても懇意だったから、頼まれたら、断われなかった […]

  • 偶然の事情で古書業界へ 村口四郎 【諸名家の宝庫を渉猟する1】

    反町 今日から村口書房の村口四郎さんのお話をお伺いすることになりました。 村口さんは、昭和十年代に御先代の村口半次郎さんの後をつがれて、今日まで二代ひきつづいて、日本の第一級の古書肆であられることは御承知のとおりです。御尊父・半次郎さんは、明治末・大正から、昭和の初めにかけて、古典籍業界では、恐らく […]

  • 村口書房主 村口四郎氏【諸名家の宝庫を渉猟する0】

    数多くの貴重な古典籍を扱った村口書房。その店主が語る稀有な証言。 本コラムでは、前回までの村口半次郎「洒竹文庫及び和田維四郎氏」(『紙魚の昔がたり』明治・大正編)に続いて、村口四郎「諸名家の宝庫を渉猟する」(『紙魚の昔がたり』昭和編)を23回にわたって全文掲載いたします。ご期待下さい。 村口四郎氏 […]

  • 室町前・中期における伊勢神宮の日々の営みを記した書

    このたび刊行した『氏経卿神事記〈史料纂集 古記録篇〉』は、15世紀前半から末期にかけての伊勢神宮(内宮)の禰宜のひとりである荒木田(藤波)氏経という人物が記した古記録の翻刻の第2冊(完結)である。 『氏経卿神事記』には、内宮の年中諸祭儀を奉仕する日々の様子、そして殿舎の状況や宮域の様子など内宮の歴史 […]

  • 太閤検地と兵農分離 中世~近世のはざまで―土着武士は、いかに動いたか?―(神田 千里)

    「井戸村家文書」と研究史 「井戸村家文書」は長浜市歴史博物館に所蔵される、近江国坂田郡箕浦村の土豪井戸村家に伝来した文書群である。昭和10年代に原文書、及びそのうち330余通を筆写収録した『歴代古書年譜』三冊が共に市井に流出してしまった。滋賀県文化財保護審議会委員であった中村林一氏(故人)の努力で『 […]

  • リオ本『日葡辞書』の発見(白井純・広島大学大学院准教授)

    キリシタン版の辞書 キリシタン版は、16世紀後半から17世紀初頭にかけて日本で宣教活動を行ったイエズス会がヨーロッパから持ち込んだ金属活字印刷機によって出版した現存30余点の文献である。『日葡辞書』(1603-04年長崎刊)はイエズス会の日本語学習の成果を象徴する辞書で、32,000語に及ぶ日本語見 […]

  • 宮崎三昧氏の蔵書【洒竹文庫及び和田維四郎氏16・最終回】

    村口 その時分の事です、なかなか売り惜しみもしましたが、良い品物を売ったのは宮崎三昧さんでした。とにかく、この人は三十年間本を売って喰べていたんですからね。 ところでこの宮崎三昧という人は、私が間接に殺したようなものなんです。この人がいよいよ身体がいけなくなって来ると、無闇に妻君の事が気にかかって来 […]

  • 青柳の珍書会の思い出【洒竹文庫及び和田維四郎氏15】

    反町 珍書会の顔触れはどんな方ですか。 村口 そうですね、大久保紫香(62)・中川徳基・林若樹・加藤直種・高橋太華(63)・宮崎三昧(64)・水谷不倒・大野洒竹・岡田朝太郎(65)・清水晴風(66)等のお歴々の方々でした。 最初から仕舞いまでつづいたのが千葉鉱蔵・大久保紫香。この大久保紫香という人は […]

  • 中世の支配者は幕府だけではない!? 中世国家の運営を担う「天皇」と「太政官」(久水俊和)

    朝廷と幕府およぼす権限と機能 令和の代替わりにより、再び「天皇制」たる学術的分析概念が脚光を浴びている。戦後長らく、日本中世史のナラティブでは武士による封建国家が天皇を中心とした古代的国家を服従させたという「天皇制」の克服が基調であった。そのため、学術的関心では中世においても保持されていた律令制太政 […]