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やさしい茶の歴史
2025/01/21
鎌倉時代後期「金沢文庫文書」にみる喫茶文化(3)茶の生産について②―やさしい茶の歴史(十八)(橋本素子)
茶の産地の広がり これまで、平安時代に大内裏茶、鎌倉時代前期に栂尾茶、中期に奈良にある茶、と中央で茶が生産されていたことを示した。 今回は、鎌倉時代後期から南北朝期を中心とする『金沢文庫文書』にみえる茶の産地を抽出し、その広がりをみていきたい。 京都茶 鎌倉時代後期も引き続き、中央で茶が生産されてい […]
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やさしい茶の歴史
2024/12/13
鎌倉時代後期「金沢文庫文書」にみる喫茶文化(3)茶の生産について①—やさしい茶の歴史(十七)(橋本素子)
生産に係る史料の特徴 前回、前々回と、『金沢文庫文書』初出の茶道具である、茶筅と茶臼についてみた。今回はこれらを使用して飲む、茶の生産について見ていきたい。 ただし、『金沢文庫文書』は、生産でも茶の栽培について記載された史料が主であり、茶の加工についての記載がほとんどないことが特徴である。 なお鎌倉 […]
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やさしい茶の歴史
2024/09/27
鎌倉時代後期「金沢文庫文書」にみる喫茶文化(2)茶筅について——やさしい茶の歴史(十六)(橋本素子)
茶筅の初見をめぐって 前回、『金沢文庫文書』に含まれる鎌倉時代後期の史料が初見となる茶具足(茶道具)として、茶臼を紹介した。今回はもうひとつの事例である、茶筅についてみていきたい。 抹茶を攪拌する道具である茶筅は、後述するように「茶振(ちゃふり)」ともいい、南北朝期の玄恵『庭訓往来』「十月復状」には […]
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やさしい茶の歴史
2024/08/22
鎌倉時代後期「金沢文庫文書」にみる喫茶文化(1)茶臼について——やさしい茶の歴史(十五)(橋本素子)
戦国時代の禅僧が見た称名寺の什物 国宝「金沢文庫文書」は、神奈川県立金沢文庫が所蔵する、鎌倉後期から南北朝期を中心とした史料群である。この4000点を超える史料の中に、約350点の喫茶文化に係る史料がみられる。 今日の本題に入る前に、戦国時代に称名寺を訪れた京都の禅僧の史料を少しばかり読んでおこう。 […]
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やさしい茶の歴史
2024/06/18
鎌倉時代中期の喫茶文化 その三――やさしい茶の歴史(十四)(橋本素子)
鎌倉時代の禅宗寺院における茶の研究 今回は、鎌倉中期の禅宗寺院と茶との関わりを見ていく。 現存する鎌倉前期に建立された禅宗寺院には建仁寺・寿福寺、中期には東福寺などがある。いずれも禅と共に顕密などが勉強できる兼修寺院であった。鎌倉中期になりようやく、曹洞宗の永平寺、臨済宗の建長寺といった、本格的な禅 […]
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やさしい茶の歴史
2023/07/4
鎌倉時代中期の煎茶法と点茶法の茶――やさしい茶の歴史(十三)(橋本素子)
醍醐寺で回し飲みされた茶 鎌倉中期には、平安前期時代以来の唐風喫茶文化、茶を煮だして飲む「煎茶法」の茶と、平安時代末期以来の宋風喫茶文化、抹茶に湯を注いで飲む「点茶法」の茶が併存していた。 寺院の法会や修法などでは、平安時代から引き続いて、煎茶法の茶を使用することが見られた。 たとえば、建長8年(1 […]
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やさしい茶の歴史
2023/06/5
鎌倉時代中期の喫茶文化 その二——やさしい茶の歴史(十二)(橋本素子)
西大寺大茶盛について 今回は、鎌倉時代中期に活躍した僧侶で、茶との関りが深いとされる、叡尊と忍性を取り上げる。 叡尊といえば、西大寺で行われる茶を使用する2つの年中行事を創始した人物として知られている。 ひとつは西大寺大茶盛である。寺伝によると、暦仁2年(1239)正月、年始修法、すなわち修正会(し […]
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やさしい茶の歴史
2023/05/29
鎌倉時代中期の喫茶文化 その一——やさしい茶の歴史(十一)(橋本素子)
今回は、鎌倉時代中期、貞応元年~弘安10年(1222~1287)の喫茶文化の様子を見ていこう。鎌倉中期は、承久の乱後、前半は比較的政治的に安定していたものの、後半には元寇があり、次第に政権も社会も不安定になる時代である。 相変わらず喫茶文化の様子を示す史料の点数自体は少ないものの、その内容は豊かであ […]
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やさしい茶の歴史
2022/12/1
明恵と茶 その二——やさしい茶の歴史(十)(橋本素子)
明恵の「駒の蹄影」伝説 前回の明恵の「深瀬三本木」伝説に引き続き、「駒の蹄影」(こまのあしかげ)伝説にも触れておこう。 まず「駒の蹄影」伝説の内容である。 ある日、宇治を訪れた明恵は、宇治の人々が茶実の蒔き方が分からず困っていたところに差し掛かった。そこで「栂山の尾の上の茶の木分け植ゑて あとぞ生ふ […]
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やさしい茶の歴史
2022/08/1
明恵と茶——やさしい茶の歴史(九)(橋本素子)
明恵の茶に関わる一次史料 今回は、栄西と共に「茶祖」と言われ、「深瀬三本木」「駒の蹄影」といった複数の伝説に彩られている明恵(高弁)について見ていく。 まず今のところ、明恵において茶に関わる一次史料(同時代史料)は、二通の書状のみであることを確認しておきたい(以下意訳は筆者)。 鎌倉時代前期月未詳1 […]