• twitter
  • facebook
文学・歴史資料のデジタル加工入門

オンラインストレージ・サービスの話 【文学・歴史資料のデジタル加工入門6】 (木越 治)

●大失敗のはなし

自宅でメインに使っているPC(かりにPC-Aとよぶ)にDropboxをインストールし、そこをメインの作業場にしておけば、以後、そこで行われた作業(ファイル及びフォルダの更新・追加・削除等)が、数分以内にオンライン上に反映されることは前回述べたとおりである。一台だけで使うだけならば、いわばバックアップとして利用するだけのことなので、格別問題になることはない。

オンラインストレージ・サービスの便利な点は、複数のマシンで同じ環境を共有できる点にある。つまり、職場のマシン(PC-B)にもDropboxをインストールておけば、移動中にPC-Aとの同期がなされるから、職場に着くとすぐに自宅と同じ環境で仕事をはじめることができるわけである。もちろんその逆も可能である。かつてのようにデータの入ったUSBメモリを持ち歩く必要がないから、なくしてあわてたりすることもない。

ただ、このサービスを利用し始めた最初の頃、こんな間違いを犯したことがある。

SugarSyncを、まず、自宅で保存用データの置き場所用として使いはじめ、まあこの程度ならいいかと思い、有料契約にしたあと、職場のPC-Bにもプログラムをインストールして使い始めようとしたときのことである。
どうせこちらにも同じファイルがコピーされるのだから、コピーのためにかかる時間及びその作業のときにPC-Bにかかる負荷を軽減しようと思い、同じデータの入っているハードディスクをわざわざ職場に持参し、それをPC-BのSugarSyncの場所にコピーしたのである。

その結果、どういうことがおきたか。

PC-Bにハードディスクからコピーされたファイル・フォルダは、新たに追加されたものとみなされる。同時に、PC-Aとリンクし、アップロードされたデータもオンライン上にあるSugarSyncからダウンロードされる。当然同じファイルは、ぶつかってしまうことになるが、そういうときは、「競合ファイル」とみなされ、そういう名を付してオンライン上に保存され、PC-A・PC-B双方にダウンロードされるのである。例示すれば

木越.jtd
木越(競合コピー).jtd
雨月物語.txt
雨月物語(競合コピー).txt
……

というようなファイルが、えんえんと出来てしまったわけである。

当初、なぜこんなことになるのかわからず、サービス窓口に電話をかけて、文句を言ったところ、「そんなことをしたら駄目です。ダウンロードされるのを待っていてくれないと同期する意味がありません」と懇々とさとされ、ようやく、自分がとんでもない勘違いしていたことに気づいたのである。

結局、PC-AからもPC-Bからも全部データを消去し、あらためてPC-Aにハードディスクからコピーし、そのあと、PC-Bにダウロードされるのをおとなしく待っていた。この間、あわせて一週間くらいはバタバタしたように思う。

ただ、こういうふうにやりたくなった気持はいまでもよくわかるのである。

PCを再起動したときなどに、オンラインストレージ・サービスが同期されるまでの様子を観察していると、まず、ファイル一覧をオンライン上とPC上の双方で作成し、それをつき合わせ、最新のものをみつけて双方にコピーする、という作業を繰り返している。全体の容量があまり多くないと、たいして時間はかからないが、100ギガバイトもあると、ファイル一覧取得のために要する時間、及びそのあとのダウンロードしている時間というのはばかにならない。32ビットマシンをメインに使っていたはずなので、最初のインストール時以後、同期を完了するまで数日かかったような記憶がある。その間、確実にPCは重くなり、他の作業に影響が出ていた。だから、それを避けたいと思ってしたことなのであるが、しかし、これはオンラインストレージ・サービスの性格を全く理解していない、無知のなせるわざであったというしかない。

いま使っているGoogleドライブを二台目のマシンに同期させたときは、あまり気にならなかったように思うが、このときは、深夜に作業するように気をつけてインストールしたからだと思う。仕事の始めにインストールしたりすると結構ストレスがたまったのではないかと思う。