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紙魚の昔がたり

特価本を全国デパートへ 【紙魚の昔がたり28】

(八木) じつは私の仕事といいますと、いまの明治文学、古書関係だけじゃなしに、出版の方も相当なものをいろいろ出させて頂いたり、それから特価本の方も、業界で一番盛んにやらせてもらってると思ってるんです。その方面は現在は別会社で、第二出版販売株式会社という名でやってるんです。全国の主なデパート・スーパーの約八十会場と契約しています。出版社からは、同業の他の店よりもズッと数多く、ご相談を頂いているもんですから、どうしてもストックが殖える。で、倉庫に本がうんとあるから、売る方法を考えなくちゃならない。それでデパートでの特価本の即売展を始めたわけです。この方面のデパート展の糸口は大阪からでして、大阪の特価本業者と東京のそれとが、連合で昭和二十七年十一月に、梅田の「そごう百貨店」で即売会をやったのがはじまり。
 成績がよかったもんですから、その後、各デパートから申し込みがございまして、その後は更に単独で各デパートと契約し、全国的に開催し、非常に好成績をあげました。今から考えると、何社の出版物を引き受けたか、とても記憶していないのですが、ずいぶん多数の出版社のものを手掛けました。一番大きく印象に残ってるのは、河出書房のを引き受けた時のことです。あの時分の金にしては巨大な金額ですし、量も大変でした。品物が割れたら困るので、同業の人と三人連合でやりました。私が代表みたいな格好でした。この時は、出版界及び大取次業界との間に、いろいろ複雑な問題が生じて、お話をすれば長くなりますし、ちょっと本題を離れますから、ここでは省略しましょう。