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文学・歴史資料のデジタル加工入門

MS-DOSでできること・その3「削除系コマンドの使用法とバックアップ対策について」 【文学・歴史資料のデジタル加工入門5】 (木越 治)

b.ストレージサービスの利用

ファイル自体のバックアップ対策は以上であるが、PCは器械であるから過信するのは禁物である。いつなんどき壊れるかもしれないということをつねに予想し、対策を立てておくべきである。

以下に引用するのは、筆者が2008年にさる新聞に書いた「忘れ物の名人」という題のコラムの一節である。

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問題なのは、数年来自宅と大学を常時持ち歩いているコンピュータ用の外付けUSBメモリーで、これが見当たらないときは本当に冷や汗をかく。数日前も、研究室に着いて、さて仕事を、と思ってカバンのいつもの場所をあけたところ、見当たらないのであせってしまい、自宅に電話をかけたり、駐車場まで再度往復したりして、1時間ほどさがしまわったことがある。実は、午前中家で仕事をしていて、なにげなく筆箱にしまっておいたのを忘れていただけのことであって、わかってしまえばなんということもないのだが、こういうのは精神衛生上まことによろしくない。このごろは、ネットワーク環境を利用してデータを共有するということも行なわれているらしいが、我々文系人間に普及するにはもうしばらくかかりそうである。だれか、メモリから持ち主が5m以上離れたら、「ボクを忘れないで!」と大声を発するソフトウェアを開発してくれないものだろうか?

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これを書いてからまだ10年もたっていないが、いまはもう、ふだんの仕事用にUSBメモリーを持ち歩くなどということはなくなった。「大声を発するソフトウェア」のかわりに、web上のストレージサービスが急速に普及してきたからである。
現在、私がメインに利用しているDropboxの他にも、メジャーなところだけで、Googleドライブ、One Drive(Microsoft)、iCloudDrive(Apple) 等があり、いずれも導入は簡単である。

DropBoxを例にすると、webサイトから自分のPCのOSにあわせてソフトウェアをインストールし、アカウントを作成するだけである。以後は、必要なフォルダやファイルをその場所においていくようにすれば、つねに同じものがweb上の自分のDropBoxにコピーされ、最新のものと同期されている。自分の使っている他のPCにもインストールしておけば、どのPCでも同じ状態で仕事を始めることができる。タブレット・スマートフォン等でも、アプリをインストールしてあれば、いつでもアクセス可能である。一般のユーザーが無料で使えるのは2ギガバイトまでであるが、私は、普及し始めた頃に何人かの友人や知り合いに紹介したりその他のサービスを利用した特典のおかげで、6ギガバイトまで使えるようになっている。ふだんづかいにはこれで充分であろう。

いまのDropBoxには、個人が有料で使うプランとしては、1テラバイトの容量・ファイルの更新履歴を1年間保存する、というのしかない。そのために支払う年間12,000円という金額を高いとみるかどうかは人によるだろう。大学に勤務していたときは、この有料プランを利用していたが、退職してからは無料プランにもどしてしまった。ファイルの履歴を保存してくれるというのはとてもありがたいのだが、1テラバイトの容量というのは、個人が普通に管理して使う容量としてはちょっと多すぎるからである。いまメインに使っているノートマシンのハードディスクは250ギガバイトくらいしかないので、250ギガバイトくらいの容量のプランがあれば、すぐにでも有料プランにアップグレードするつもりはあるのだが……。

現在、有料プランで利用しているのは、Googleドライブである。PDFファイルの置き場所として使用しているので、更新はそんなに頻繁ではない。100ギガバイトで月1.99ドル。このくらいなら個人利用でも妥当だという判断である。もっとも、その上のプランはやはり1テラバイトで月9.99ドルというのしかない。iCloudには、200ギガバイトで月400円というプランがあり、容量も値段設定も魅力的だが、使い慣れていないので、すぐには手を出しかねている。

この種のサービスは、ソフトウェアと同様かなり頻繁にプラン設定や料金が変わるので、もうしばらく様子をみてから決めるつもりでいる。

比較のポイントとしては、

1.無料プランの容量がどのくらいか(新しく始めたものほどユーザー獲得のために無料プランの容量を多くする傾向にあるが、そのうち定着すると変更されるから、簡単に乗り換えたりしない方がいい)
2.有料プランの種類と値段との関係
3.削除ファイルを含めた履歴をどのくらい保存しているか、また、それを復元できるか

等の諸点である。

Dropboxでは、無料プランでも30日以内のファイル履歴(削除ファイルを含めて)を保存している。有料プランであれば1年間保存している。そんなにしょっちゅう使う機能ではないが、間違えて更新してしまったファイルの情報をこの履歴ファイルで復元できたことが何回かあり、とてもありがたかった。

1・2は、それぞれのサイトで簡単に見ることができるが、3は、よく説明を見ていかないとわかりにくい。今回調べたところでは、iCloudは10日間保存するとのこと。Googleドライブは、履歴を保存しているという説明はあるが、どのくらいの期間か保存するのかは不明だった。

もちろん、アカウントを設定しているとはいえ、web上にあるわけだから、セキュリティの問題はつねにつきまとう。秘密を要するファイルはUSBで持ち歩くとか、ここに置かないようにする等の心得は当然必要である。