尊経閣善本影印集成
透過光撮影で読み解く紙背文書 『外記日記 新抄』の見どころ(遠藤珠紀・東京大学史料編纂所)
貴重な紙背文書約160紙の全貌を初公開
さらに全巻にわたり紙背文書が存在する。今回、この紙背文書も全点撮影、収録された。紙背文書は年号のはっきりしたものでは、延慶2年(1309)~貞和2年(1346)の文書を中心に確認でき、殊に康永年中(1342~1345)の文書が多く見える。160紙にわたる紙背文書のうち、30通ほどは『大日本史料』第6編に収載されているが、残りの約130通ほどは未翻刻・未紹介で、本冊の刊行により、全貌が確認できるようになった。朝儀に関する文書、公卿補任や補歴書写、昇進を望む申状といった公家社会に関わる文書はもちろん、家領に関わる文書、借用状、契約状などさまざまな内容が見える。巻一・二には院文殿関係と推測される文書も多い。
かつ本記の紙背には修補の過程で裏打ちがなされており、これまで原本を見なくては判読が困難であった。今回『尊経閣善本影印集成』では、高精細カラー図版に加えて透過光撮影が行われ、その画像も参考図版として掲載されている。これによってこれまで見えなかった文字も読み解けるようになった。