• twitter
  • facebook
尊経閣善本影印集成

透過光撮影で読み解く紙背文書 『外記日記 新抄』の見どころ(遠藤珠紀・東京大学史料編纂所)

記録が少ない鎌倉時代後期の政治史を知る

今年度より刊行の始まった『尊経閣善本影印集成』第九輯鎌倉室町古記録編のうち、72冊・73冊では、『外記日記 新抄』巻一~五、『享禄二年外記日記』が紹介される。この『外記日記 新抄』は鎌倉時代後期の中原氏西大路流の師種の日記を、その孫師栄がまとめたと推測される史料である。文永元年(1264)~4年、弘安10年(1287)の5年分がほぼ通年で残されている。中原氏西大路流は朝廷の事務部局である外記局の外記を輩出した一族である。本記は西大路流の断絶後、同じく外記局中原氏押小路流に伝えられ、元禄2年(1689)ごろに前田家に入った。

この日記には、将軍宗尊親王の追放、様々な鎌倉とのやりとり、蒙古からの牒状の到来、南禅寺の創建、勅撰集続古今和歌集の選集など興味深い記事が多く見える。他の記録の多くはない時期にあって、貴重な史料である。