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コラム

料紙から見る原本調査の世界(竹内洪介・日本近世文学)

● 未来へ続く料紙研究

現在、料紙研究は黎明期にあり、今後さらなる検討が期待される。料紙鑑定の方法も千差万別であり、斐楮交漉紙と楮打紙の関係はどのようなものか、厚漉の雁皮紙であれば簀目が見えるものもあるのではないか等、問われて即答できない問題も多い。これらの問題についてはもちろん筆者としても一応の答えを持ってはいるのだが、世にあるすべての伝本を見たわけではないから、断定はできない。しかもそれはあくまで一家言であって、往々にして扱う時代や分野が異なる専門家は異なる見解をお持ちである。他人の成果を拝見したとて、やはり自身で触れていない紙ではそれを鵜呑みにすることもできない。

上記のような問題を解消するためにも、料紙研究にとどまらず、垣根を超えた書誌学研究の必要性を感じている。料紙・装訂・墨蹟・文字・本文・伝承といった種々の見地から総合的に判断してこのような問題は解決されるべきだろう。そうした活動の原点は写真資料が多く出回った現代でもやはり原本調査に見出すほかなく、そうした意味でもさらなる調査を行って研鑽を積む必要があると強く感じている。


竹内洪介(たけうち・こうすけ)

2019年3月 北海道大学大学院 文学研究科 修士課程 修了
2019年4月 北海道大学大学院 文学院 博士後期課程 入学

現在、北海道大学大学院文学院在籍中。国文学研究資料館共同研究(特定研究)「軍記および関連作品の歴史資料としての活用のための基盤的・学際的研究」(研究代表者・井上泰至)研究協力者。