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出版部

オンライン授業に国立国会図書館電子展示会の活用を!(浜田久美子)

新型コロナウィルスの感染が拡大するなか、多くの学校がオンライン授業を余儀なくされるであろう。教員は経験のないオンライン教材を短期間で作成しなければならない。そこで、大学、高校での授業に活用できるウェブサイトとして、国立国会図書館の「電子展示会」を紹介したい。

電子展示会はインターネットで自由に閲覧できるため、授業のテキストや学生への課題として利用できる。また、「近代日本人の肖像」「錦絵でたのしむ江戸の名所」などの画像は自由に利用でき、授業教材に活用できる(詳細は「当館へのお申込みが不要なコンテンツについて」参照)。ここでは、オンライン授業に活用できそうな電子展示会の一部を紹介し、教員の一助としたい。

 

(1) 中高生のための幕末・明治の日本の歴史事典

中学生や高校生に、幕末・明治の日本史をテーマに、史料にもとづく歴史研究の重要性を説いたものであるが、大学生や一般の方々も楽しめると思う。中学生には「人物編」がわかりやすく、「史料編」や「テーマ解説」は高校生以上が対象となろう。お勧めは「テーマ解説」である。歴史の流れを説明付けるのが、空想ではなく「史料」であるとわかるように、多くの史料画像を掲載している。これらは、デジタルコレクションでインターネット公開されているものなので、画像をクリックすると、収録文献の全ページを閲覧できる。

 

(2) 本の万華鏡

永田町の国立国会図書館(東京本館)に来館した人なら、昔は本館の入口に本の展示があったと記憶している人もいるかもしれない。あの常設展示を電子展示としたのが「本の万華鏡」である。恋文・和菓子・温泉・囲碁・オリンピック…さまざまなテーマのミニ展示をネット越しに閲覧できる。ひとつのテーマを択び、レポートを作成させることも可能であろう。

 

(3) 豊富な歴史ネタ

ここでは、歴史の授業で有用と思われるものとして、「史料にみる日本の近代」「日本国憲法の誕生」「江戸時代の日蘭交流」「博覧会―近代技術の展示場」を挙げたい。私は2025年の大阪での万博開催が決定した際に、授業で万博の歴史を「博覧会―近代技術の展示場」を使い説明した。各展示会の部分的な活用(「このページをみてください」という案内)もできるだろう。

 

(4) 児童書と児童文学

国際子ども図書館作成の電子展示会は、豊富な児童書を掲載し、国内外の児童文学の知識を養うコンテンツを揃えている。
ヴィクトリア朝の子どもの本」では、全文画像の閲覧ができる児童書も少なくない。児童文学だけでなく、英語教材としても利用できるのではないか。また、「日本初☆子どもの本、海を渡る」は、日本の児童書の翻訳についての教材にもなるだろう。

 

(5) デジタルコレクションから素材を発掘!

最後に、ネット公開のデジタルコレクションから、素材となる資料をみつけ、URLを伝えれば、学生にも見てもらえる。「近代デジタルライブラリ―」と呼ばれていた時代に作成されていた「資料あれこれ」は、こんなおもしろい資料がある、と教えてくれる。
価値のある資料群としては、「内務省検閲発禁図書」がある。ネット公開は多くが米国議会図書館所蔵のものであるが、近代史、出版史における第一級の資料である。

 

以上、紹介できたものは一部なので、あとは「電子展示会」のページからそれぞれの展示内容を見てほしい。図書館の展示なので学習指導要領に基づき作成されたものではない。しかし、何事もネット検索が中心の学生に図書館の活用を促してきた立場からは、今回のオンライン授業が図書館離れを拡大させないよう祈るばかりだ。公衆送信等の制約があるなかで、確かな情報に基づく授業が行えるよう一案を示したつもりである。


■浜田久美子

国立国会図書館司書を経て、現在は大東文化大学文学部教授。専門は日本古代史。 [主な著作]『日本史を学ぶための図書館活用術』(吉川弘文館、2020年)、『訳註 日本古代の外交文書』(鈴木靖民・金子修一・石見清裕氏と共編、八木書店、2014年)、『日本古代の外交儀礼と渤海』(同成社、2011年)
デジタル時代の研究者へ―研究史と参考図書―(八木書店コラム、2018年)

(2020年4月7日更新)