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日本古書通信

「日本古書通信」7月号(88巻7号)7月14日発売

主要目次

川島幸希 「署名本の世界」みたび1 北村透谷『蓬莱曲』戸川残花宛
牧村健一郎 山尾庸三と明治1 横浜同窓会
竹居明男 秋艸道人會津八一と正倉院―遺墨「金銀平文琴銘」短冊とその周辺
三好 彰 福沢諭吉がアメリカで出会った医者
三昧堂 昭和14年の『改造』を読む
高木浩明 古活字探偵事件帖7 異植字版とは何者か?2
田坂憲二 吉井勇の読書生活7 太宰治を読む(下)
真田幸治 小村雪岱の知られざる雑誌表紙絵38『講談雑誌』
小野純一 リレー連載「ミステリ懐旧三面鏡」22〈春陽文庫の全貌が知りたい〉
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集46 徒然草写本
岡崎武志 昨日も今日も古本さんぽ153 国分寺市「雲波」東村山市「なごやか文庫古本市」
森  登 銅・石版画万華鏡190 喧騒と静寂
宮尾與男 江戸戯画とその周辺17 耳鳥斎以後その8 桃田三笑

※連載終了のご挨拶
今月号まで36回に亘り連載いたしました「八木書店古書部 近代日本文人の葉書」が終了となります。大変反響の多い連載でした。感謝申し上げます。

「署名本の世界」みたび(川島幸希)より

本誌で日本近代文学の署名本について初めて連載したのは、平成7年2月号から平成9年12月号。タイトルは「献呈・識語のある初版本」で、平成10年6月刊行の『署名本の世界』(日本古書通信社)となった。次の連載は「続署名本の世界」。こちらは平成15年6月号から平成17年6月号まで続き、同年12月に『署名本は語る』(人魚書房)として刊行された。その後もよく署名本のことを書いたが、連載はしていない。
このたび18年ぶりに署名本の連載をするのは、いつものように単なる思い付きと気まぐれによるものである。最初の連載時に34歳だった私も62歳になり、初版本コレクターはとうの昔に引退した。近年はほぼ署名本しか買わず、人生も初版本も終活の時期に入っているのでそれすら稀である。したがって、連載がいつまで続けられるのかは本誌の存続問題もあり不透明なれども、お読みいただければ嬉しい。
(略)北村透谷の署名本は今まで一冊しか発見されていなかったので、今回取り上げる本は2冊目となる。25歳と早世の透谷は生前の著書が3冊だけで、2冊(『楚囚之詩』『蓬莱曲』)は大変な稀覯本。残りの1冊(『エマルソン』)も届いた時には病に臥せっており、島崎藤村によれば、手に取っただけで中を開けて見る気もないような健康状態だった(「北村透谷二十七回忌に」『飯倉だより』)。ゆえに明治前半は本に署名する習慣が一般的ではなかったことも考え合わせれば、透谷の署名本が極端に少ないのも納得がいく。
透谷の1冊目の署名本を紹介したのは、岩波書店版『透谷全集』の編者勝本清一郎である。彼が所蔵する『蓬莱曲』(明治24年、養真堂)に「折れたまゝ咲いて見せたる百合の花 透谷 棲月君」と自筆で書かれ、この筆跡が『透谷集』(没年刊行)の口絵に「棲月君」(戸川秋骨の別号)を除き転写された。なお表紙に墨書で「呈」と記された『楚囚之詩』の図版を見たことがあるものの、もとより一文字だけでは透谷の筆跡と断定はできない。


7月号 7月14日発売 定価750円(送料79円) ※ご注文はメールまたは電話、FAXで。

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