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日本古書通信

「日本古書通信」2021年8月号(8月13日発売)

主要目次

特集
八木書店古書部 近代日本文人の葉書13

本と人
山岸郁子 久米正雄撮影「玉川遊記」について
鈴木紗江子 北米における日本の古書研究(旧:シアトルから―ライブラリアンと古書)
川島幸希 近代作家の資料3 島崎藤村の手紙
古川富章 種田山頭火文献考(2)山頭火は何人いたか(河井醉茗編)
大野隆司 鯛焼き氏八たび(最終回)

連載
岡崎武志 昨日も今日も古本さんぽ130 埼玉県坂戸市「古本あしやま」・台東区蔵前「フローベルグ」
木村八重子 未紹介黒本青本133
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集(23) 道成寺縁起
真田真治 小村雪岱と挿絵倶楽部①「古今戦争画譜」

コラム
森  登 銅・石版画万華鏡168 岡田春燈斎≪西洋市街図≫
出久根達郎 本卦還りの本と卦172 夫婦百景

古本屋
札幌・一古書店主の歩み 弘南堂書店高木庄治氏聞き書き 創業前(一)
ポラン書房 石田恭介 ポランな日々③

その他

 札幌・一古書店主の歩み 弘南堂書店高木庄治氏聞き書き 創業前(一)より

昨年11月に刊行された『北の文庫』71号「古書専門弘南堂書店高木庄治氏聞き書き一~三」を、これから2年近くに亘って再録させて頂く。聞き書きは、元藤女子大学付属図書館司書大館光男氏、元北海道大学付属図書館司書藤島隆氏を中心に、古地図研究家で高木氏と親しい髙木崇世芝氏を加え、平成12年9月、13年7月、14年10月に収録された。今回B5判2段組を本誌の体裁に変更、また挿入の写真を新に製版、追加した。

なお、大館氏は本年2月8日に逝去された。この聞き書きは20年前の記録だが、昨年初めて刊行された。しかし小部数の為、今回敢えて高木、藤島氏の御了解を得て広く公開するものです。(編集部)

少年時代・南陽堂書店の思い出
私が生まれたのは昭和八年三月十二日ですね。南陽堂書店(一九二九(昭和四)年創業)は今の場所(札幌市北区北八条西五丁目)のちょうど隣り、現在の店の北隣りにあったんです。うちの親父(高木庄蔵・一九〇五(明治三八)年~一九六五(昭和四〇)年)に言わせますと、そこに夜逃げした料理屋さんがあって、その跡を親父が借りたらしいです。

大家さんが今も南角にある坪田商店で、坪田さんは明治三十年代の後半からあった店だと思います。この辺りでは坪田さんと沢田さん(雑貨商・北九条西四丁目北大正門前)が古いんです。

明治四十三年の札幌市の商工地図をこの間やっと手に入れましてね。以前一度手に入れて札幌市の図書館に寄贈したことがあるんですが。それに坪田さんと沢田さんが載っていました。その地図の北の方(現JR札幌駅(北六条西二~四丁目)以北)で僕が知っている店はその二軒だけです。

親父はそれまで北七条西五丁目にいて、そこから引っ越して店を借り、本格的に古書店を始めました。非常に北大の学生さんにかわいがられて、店の前の真ん中に黒板の新入荷速報を置き、間口は今の店よりもちょっと大きかったんじゃないでしょうかね。平屋だったんですよ。

それがこの写真です。この左隣りが今の店の場所です。この坂口という洋服屋が現在の南陽堂です。その右隣りが亀山と言ったか、標本屋さんで三階建てのちょっと洒落たサイロ造りの建物でして、現在フシマン商事というビルになっています。北七条の南陽堂の写真はあるのかどうか分かりません。

新入荷速報の黒板は有名で、一週間に一度書き直していました。〈店の写真を見ながら〉ここがストック場で、こっちが店だと思いました。僕らが子供の頃はお客さんの間をくぐるようにして外から帰って来ました。

ある年、亀山さんの三階の屋根から雪が落ちてきました。昭和十二・三年頃かな。僕がまだ小学校に上がる前です。店の中にドーンと雪が、屋根をぶち抜いて入ってきて大騒ぎになりました。そんなこともあって、隣りの坂口さんが引越しされて店が売り物に出たときに、親父がそこへ、借家ではない初めての自分の店(家)として移るわけです。それが今の場所です。

僕はそうですね、中学生の頃くらいから、何となくストック場の…。店員としておふくろの弟(相馬寿幸氏)が住み込みでいたんですよ。十幾つから入ってますけどね。今、横浜にいます。その他に砂川出身の住み込み店員も一人いました。

当時は店というのは朝六時から起きたら掃除を始め、七時か八時にはもう完全に開いている状態でしたからね。夜は夜で十時くらいまでやりましたから。夜カーテンを閉めても電気は消さなかったものです、戦前は。私のところは消さなかったね。全部じゃないけれど。ほとんど店の中が明るくなった状態で夜通し点いていました。電気代というのは割合い安かったのではないでしょうか。昭和十四・五年頃までそうでしたね。裸電球でしたけど。

 

【お知らせ】

本誌は本年3月号で通巻1100号を迎えました。それを記念して、八木書店古書部が30年間に亘って蒐集してきた、近代文人の葉書1700名1700枚を全て画像付きの販売目録を兼ねた記事として、2020年8月号より3年間に亘り掲載していくことになりました。講談社『日本近代文学大事典』人名索引に掲載された文人を五十音順に掲載していきます。
ネットでの公開販売はなく、本誌定期購読者のみへの販売となります。
連載を保存することで、近代文人筆跡の参考文献となります。この機会に定期購読の契約をお勧めいたします。


8月号 8月13日発売 定価750円(送料79円)※ご注文はメールまたは電話、FAXで。

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