「日本古書通信」2021年7月号(7月14日発売)
主要目次
特集
八木書店古書部 近代日本文人の葉書12
本と人
牧村健一郎 大津事件で重要な役割を果たした鉄道―伊藤博文を軸に(上)
川島幸希 近代作家の資料2 芥川龍之介の俳句
古川富章 種田山頭火文献考(1)―山頭火は何人いたか(島田五空編)
大野隆司 鯛焼き氏七たび
連載
真田真治 小村雪岱の知られざる雑誌表紙絵㉘
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集(22) 磯崎
岡崎武志 昨日も今日も古本さんぽ129 足立区西新井「書簏高田書店」
福田 博 和書蒐集夢現幻譚113 『FRONT』の惜しみなさ
コラム
森 登 銅・石版画万華鏡167 フォンタネージ『画図入門』と銅板画
出久根達郎 本卦還りの本と卦171 丸い物
その他
種田山頭火文献考(1)(古川富章)より
種田山頭火の諸文献について一考察をしていきたい。そのためにはまず、山頭火とは誰かという、ごく根本的な問題を整理しておこうと思う。
そもそも山頭火という言葉は、六十干支の生年を、甲子から二年ずつ、三十組に分類した納音という運勢判断であることは、よく知られているとおりである。これは万物が「木火土金水」の五行から成るとする、陰陽五行説に基づくもので、生年が持つ音韻がその人の運命を示すと考える中国起源の思想のようだ。
種田山頭火(本名、正一)の師・荻原井泉水(本名、藤吉)なども、この納音から俳号をつけたものだが、荻原井泉水(明治十七年生)と違って、種田山頭火の場合、実際の生年(明治十五年生)の納音「楊柳木」からではなく、本人曰く、たまたま見出した「山頭火」の文字の音と義が気に入って、「山頭火」を雅号に選んだものだという。
ところが本来の納音における「山頭火」の干支は、甲戌(きのえいぬ)と乙亥(きのとい)、すなわち明治七年と八年である。したがってこの年が生まれ年である者も「山頭火」を自らの雅号にした可能性があるため、「山頭火」は種田山頭火に限らないことに、よく注意をしなければならないということになろう。
【お知らせ】
本誌は本年3月号で通巻1100号を迎えました。それを記念して、八木書店古書部が30年間に亘って蒐集してきた、近代文人の葉書1700名1700枚を全て画像付きの販売目録を兼ねた記事として、2020年8月号より3年間に亘り掲載していくことになりました。講談社『日本近代文学大事典』人名索引に掲載された文人を五十音順に掲載していきます。
ネットでの公開販売はなく、本誌定期購読者のみへの販売となります。
連載を保存することで、近代文人筆跡の参考文献となります。この機会に定期購読の契約をお勧めいたします。
7月号 7月14日発売 定価750円(送料79円)※ご注文はメールまたは電話、FAXで。
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