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新刊納品

『近代歌舞伎年表 名古屋篇』第11巻

本日3月24日、国立劇場近代歌舞伎年表編纂室編『近代歌舞伎年表 名古屋篇』第11巻の見本が10冊納品になりました。

見本が納品されたら、編集担当者が即検品を行います。問題なければ、営業に渡して、取次に見本として届けて貰います。

 お陰様でこれで、週明け、27日に、発売できます

 

近代歌舞伎年表 名古屋篇 第11巻「ひろいよみ」

 

第11巻は、大正8~9年までの2年間を収録。

大正8年には、6月28日のヴェルサイユ条約調印を受け、全国的に祝賀行事が開催されていました。名古屋市でも鶴舞公園において、盛大に記念祝賀会が催され、雷門助六社中による手踊をはじめとする様々な出し物や万歳・二輪加・手品・曲芸などの余興が行われました。

大正7年に全国を混乱に陥れた米騒動も、名古屋では景気を一気に後退させるまでには至らなかったようですが、この時期の名古屋の興行界は、第10巻で触れたように名古屋在住の有名俳優に恵まれない等、劇場の数に比して必ずしも充実している状況とは言い難かったようです。それでも初代中村鴈治郎、初代中村吉右衛門、七代目坂東三津五郎といった東西の名優たちによって賑わいを見せ、十三代目守田勘弥主宰の文芸座による菊池寛作品の上演等も好評を得ていました。

この巻で注目したい点としては、劇場の衛生面に関する記述です。大正9年1月に愛知県下の133を数える興行施設に対し、禁煙励行と喫煙室の設置が通達され、興行場主を警察署にまで呼び出したとあります。劇場の火災についてはこれまでも記事にしばしば登場しますが、天然痘のため大規模な消毒をした末広座の記事や、喫煙や場内での飲食への様々な意見が掲載される等、衛生面での意識の高まりを窺うことができ、これが劇場施設の近代化への一歩を進めることになっていくのか興味深いところです。

また本巻より、活動写真常設館で催された余興や実演については、寄席、見世物と同様にして各年末に一覧表として整理、利用者の便宜を図ることとしましたのでぜひご活用ください。

次回は18年3月末刊行予定です。