活版印刷の基礎知識
象嵌(ぞうがん)【活版印刷の基礎知識9】
印刷後に誤植が見つかった場合や、増刷時に加筆訂正しなければならない場合、「象嵌(ぞうがん)」という手法で、版を訂正することがある。
鉛版の誤植・訂正部分を切り込んで、活字を埋め込み、その状態で紙型に取り直し、改めて鉛版を作る。
数字分の訂正や文字数が変更になった場合は、正しい文字も含めて一行単位、段落単位の象嵌を行うことになる。
そのため、活版印刷時代の著者や出版者は、よく字数を数えたものだ。
増刷が繰り返されると、紙型が弱ってくるので、作り直す必要がある。
紙型は作り直す度毎に版面が縮小する。
初刷りの版面と度重なる増刷後の版面の違いが明らかになると、新たに組版することになる。
これが版の違いとして奥付に「第○版、第一刷」などと記される「版」と「刷」との違いはここにある。
2000年代半ば以降の最新の印刷方式は、CTP(Computer To Plate)という方式が主流を占めている。
刷版(さっぱん)と呼ばれるアルミ板に直接文字情報を書き出し印刷機にかける方式である。
刷版は、繰り返し使えないので、毎回、版を新しくするのだが、「○刷」として奥付に記されるのが一般的である。
(出版部・T)
『近代文学草稿原稿研究事典』埋草(八木書店作成)より転載