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書店に並ばない本

書店に並ばない本10(白戸満喜子)

以下は「日本古書通信」掲載「特殊文献の紹介」欄に紹介されたものの一部です。
入手などについては、各書末尾の発行所へ直接お問い合わせ下さい。販売を主としたものではありませんので、丁寧な対応をお願いいたします。(日本古書通信社)

 

青栁貴史著「製硯師」

本書は、中国の伝統的手法に基づいて硯を作成する流派「青栁派」の作硯家とその技術を紹介している。構成は「はじめに」「青栁派とは」「第1章 戦後の改刻が育てた技術」「製硯師ができあがるまで」「第2章 伝統的彫刻」「インタビュー」(青栁彰男)「第3章 新しい硯式の提案」「第4章 夏目漱石愛用硯の復刻」「対談 製硯師 青栁貴史×ニッポン手仕事図鑑編集長 牧圭吾」となっている。墨を磨るために用いる石の造形物である硯の世界を、技術・原料・伝統的意匠・これからの展望を合わせて伝えている写真集である。A4判、93頁、2018年2月。天来書院発行。2500円。ISBN 978-4-88715-340-0(〒140-0001 東京都品川区北品川1-13-7)

 

三宅興子講師「アメリカと日本の子どもの本 ―その関係をさぐる―」

本書は、2017年5月27日・6月24日・7月22日に大阪府立中央図書館で開催された連続講座の報告集である。講演内容は「第1回 アメリカの児童書の歴史 アメリカから贈られた子どもの本から考える」、「第2回 アメリカから日本へ絵本がやってきた 「岩波の子どもの本」と「世界傑作絵本」」、「第3回 『ちびくろサンボ』がたどってきた道 イギリス・アメリカ・日本」という構成になっている。各回の配3月。大阪国際児童文学振興財団発行。1200円。(〒577-0011 大阪府東大阪市荒本北1-2-1)

 

長野県立歴史館編集・発行「最古の信州ブランド黒曜石 ―先史社会の石材獲得と流通―」

本書は、平成30年9月15日から11月25日まで同館で開催された企画展の図録である。構成は「Ⅰ 黒曜石 黒く耀く石の魅力~プロローグ~」「Ⅱ 黒曜石研究の聖地 研究の歴史が長い信州の黒曜石」「Ⅲ 黒曜石利用のはじまり 黒曜石採取の時代」「Ⅳ 縄文文化を繁栄に導いた黒曜石 黒曜石採掘の時代」「Ⅴ 北と南の黒曜石文化 北海道と九州島の黒曜石文化」「Ⅵ 信州黒曜石文化はすごい! 最古の信州ブランド黒曜石」となっている。コラムとして「黒曜石産地推定分析から何がわかるか」(大竹憲昭)、「カーゴ石遺跡で出土したトラックいっぱいの黒曜石」(中島透)、「星糞峠黒曜石原産地遺跡について」(大竹幸恵)、「星ヶ塔黒曜石原産地遺跡について」(宮坂清)、「黒曜石集散地遺跡の石器製作を考える」(山科哲)、「縄文人も黒曜石を等級分けして貯蔵した?」(大竹憲昭)、「阿久の縄文人は黒曜石をなんでもかんでも持ってきたのか」(佐々木潤)、「縄文中期に発達した食糧生産の技術」(小松隆史)、「黒曜石集積址における黒曜石の大きさの違い」(山田武文)、「黒曜石製石器製作の終焉」(町田勝則)、「道具としての黒曜石利用の変化」(町田勝則)、コラム「星糞と呼ばれていた黒曜石」(大竹憲昭)、「現在の技術を駆使して過去を探る」(水澤教子)を収録している。旧石器・縄文時代の人々にとって、黒曜石は刃物・武器の原料として欠かせないものであった。古くは漆石・烏石・黒羊石・星糞と呼ばれたこの貴重な地下資源は、物資の交流に伴い日本各地に伝播している。本書は原産地から黒曜石文化について最新の情報を発信している。A4判、87頁、平成30年9月。1000円。(〒387-0007 長野県千曲市屋代260―6)

 

城倉正祥・青木弘・伝田郁夫編集「デジタル技術を用いた古墳の非破壊調査研究 ―墳丘のデジタル三次元測量・GPR、横穴式石室・横穴墓の三次元計測を中心に―」

本書は、早稲田大学東アジア都城・シルクロード考古学研究所の調査研究報告である。構成は「序言―本書の目的と射程―」「第1部 墳丘の非破壊調査研究―埼玉県東松山市野本将軍塚古墳の三次元測量・GPR調査―」「第2部 横穴式石室の非破壊調査研究」「第3部 横穴墓の非破壊調査研究」「緒言―本書の成果と今後の課題―」となっている。本報告書は埼玉県東松山市野本将軍塚古墳・埼玉県東松山市若宮八幡古墳・埼玉県東松山市附川1号墳・埼玉県行田市地蔵塚古墳・東京都大田区新井宿横穴墓群・東京都大田区山王横穴墓群を対象としている。デジタル技術を用いた非破壊調査は、技術の特性をいかに理解して活用するかが課題となる。アナログとデジタルをいかに組み合わせるかという視点からも興味深い報告である。A4判、120頁、2017年10月。(〒162-8644 東京都新宿区戸山1-24-1 早稲田大学文学学術院(考古学コース))
早稲田大学東アジア都城・シルクロード考古学研究所 調査研究報告 第4冊

 

堺市博物館編集・発行「堺・経典をめぐる文化史」

本書は、平成30年11月17日から12月16日まで同館で開催された企画展の解説付き図録である。構成は「第Ⅰ部 古写経が語る世界」が「Ⅰ―1 堺ゆかりの装飾経」「Ⅰ―2 新発見!再会した光明皇后願経(五月十一日経)」「Ⅰ―3 天野山金剛寺一切経からよみがえる堺の寺院」、「第Ⅱ部 経典から見る堺ゆかりの傑僧」が「Ⅱ―1 行基―仏教を民衆に布教し、社会事業をおこなった僧―」「Ⅱ―2 衆徳恩冏(しゅうとくおんけい)―阿弥陀経十万巻を書写した「十萬上人」―」「Ⅱ―3 河口慧海(かわぐちえかい)―釈迦の真の教えを求めてチベットを目指した僧―」となっている。「特別寄稿」として「新発見の光明皇后願経―法道寺蔵『雑阿含経』第三十六―」(落合俊典)、「明治の三蔵法師・河口慧海が求めたもの」(奥山直司)、「概説」として「〈堺・経典をめぐる文化史〉成立記」(堀川亜由美)を収録している。A4判、79頁、平成30年11月。1240円。(〒590-0802 大阪府堺市堺区百舌鳥夕雲町二丁 大仙公園内)
Cultural history of sutras in Sakai

 

駒ヶ根シルクミュージアム編集・発行「世界の様々な国のカイコと繭 ―日本が保有する貴重な遺伝資源―」

本書は、平成30年7月22日から8月26日まで同館で開催された特別展の図録である。構成は「世界の様々な国のカイコと繭 ―日本が保有する貴重な遺伝資源―」「第1部 世界のカイコ ―世界各地のカイコは個性的―」「第2部 変異体(特別変異)のカイコ ―珍しいカイコ―」となっている。「コラム」として「三蔵法師、蚕種西漸を伝える」「イタリアの蚕病とバッシー」「フランスの蚕病とパスツール」「インドと日本の養蚕を結ぶ物語」「インドの養蚕事情」「インドのサリー」「タイシルク」「タイの黄色繭の遺伝」「琉球多蚕繭と久米島紬」「御舎利蚕とイタリアのバッシーが研究した白彊病蚕」「日本錦」「大草」「古石丸」「青白」を収録している。化学繊維の急速な品質改善により、生糸のみならず養蚕文化も急速に消えつつある。カイコは絹の生産にかかわるだけではなく、医薬品の原料として期待されている。本書はかつて稲作と並んで日本の農業を支えた養蚕とカイコそのものに注目し、歴史的かつ科学的に概説している。A4判、50頁、平成30年7月。1000円。(〒399-4321 長野県駒ヶ根市東伊那482 )

 


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