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村口書房

和田氏の逝去【洒竹文庫及び和田維四郎氏10】

村口 そうしますると、和田さんが大正九年十二月二十日にお亡くなりになりました。それと同時に私は岩崎文庫の御用も辞することになりました。

ところが和田さんの葬式がすんだ後で、高橋美章さんと私が呼ばれまして、「和田君が死んだから文庫の購入を止めるということは不合理であるから、今まで通りやって貰えまいか」という有難いお話だった。

ところがどうもああいうような大きなお家になると、反対がなかなか多いのです。これを押し切ることが困難である。その反対を押し切ったというのも、和田さんの力があったればこそです、この機会にと、高橋君とで堅くお断り申し上げました。

それで和田さんは只今申し上げました通り、大正九年十二月二十日にお亡くなりになって、その遺蔵書は実に天下無比のものばかりが揃っているといってよい位で、量は少ないが、……それは遺言で全部岩崎家へ寄付(47)になった。それで雲村文庫は何もなくなってしまった。雲村文庫のお話はこれ位で中止と致します。

(つづく)


※発言者
(姓・・・・・・商号 氏名)
村口・・・・・・村口書店 村口半次郎氏
反町・・・・・・弘文荘 反町茂雄氏
〇聴講者
青木・・・・・・青木書店 青木正美氏
東・・・・・・東書店 東浅吉氏
大雲・・・・・・大雲堂書店 大雲英二氏
市川・・・・・・市川書店 市川円応氏
太田・・・・・・井上支店 太田保雄氏
鹿島・・・・・・光明堂書店 鹿島元吉氏
窪川・・・・・・窪川書店 窪川精治氏
小林・・・・・・小林書店 小林静生氏
小宮山・・・・・・小宮山書店 小宮山慶一氏
酒井・・・・・・十字屋書店 酒井嘉七氏
佐藤・・・・・・崇文荘書店 佐藤毅氏
諏訪・・・・・・悠久堂書店 諏訪久作氏
高林(定)・・・・・・一心堂書店 高林定輔氏
高林(末)・・・・・・東陽堂書店 高林末吉氏
西塚・・・・・・巖南堂書店 西塚定一氏
松村・・・・・・松村書店 松村竜一氏
八木(荘)・・・・・・八木書店 八木壮一氏
八木(敏)・・・・・・八木書店 八木敏夫氏
八木(正)・・・・・・安土堂書店 八木正自氏
山田・・・・・・山田書店 山田朝一氏
吉田・・・・・・浅倉屋書店 吉田直吉(後の11代目吉田久兵衛)氏


(47) 遺言で寄付 事実は寄付という形式の売却。


著者

村口半次郎
村口書房(東京市神田区今川小路二丁目十七〔旧地名〕)初代主人

下谷御徒町の、有名な浮世絵版画商吉金(吉田金兵衛)方で修業。吉金は版画と共に古書を販売したが、村口さんは古典籍を主とし、中年以後は浮世絵は殆ど扱わないようでした。明治三十年頃から活躍し、四十年頃から大正九年まで、大蒐書家和田維四郎の特別の受顧を受け、そのおかげで、古典籍についての知識を広くすると同時に、業界に雄飛するに十分な資財を獲得。大正末期から昭和十年頃までが全盛期でした。古典籍業界では、東西を通じて第一の実力者として、また書林定市会(後の東京古典会)の顧問(という名の会長)として、勢威を振るいました。昭和十五年一月歿。六十五歳。


※このコラムは反町茂雄編『紙魚の昔がたり』(明治大正篇)でお読みいただけます。

          

『紙魚の昔がたり』(明治大正篇)  関連書・『紙魚の昔がたり』(昭和篇)