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書店に並ばない本

書店に並ばない本5(白戸満喜子)

以下は「日本古書通信」掲載「特殊文献の紹介」欄に紹介されたものの一部です。
入手などについては、各書末尾の発行所へ直接お問い合わせ下さい。販売を主としたものではありませんので、丁寧な対応をお願いいたします。(日本古書通信社)

遊磨正秀編集「ホタル関連文献目録」

全国ホタル研究会50周年記念事業として、2000年に刊行された同名の目録を改訂している。日本人による文献(日本人が主著者で外国語の文献を含む)が6241編、海外研究者による文献が1516編収録されている。「日本人編」は50音順、「海外研究者編」はアルファベット順の排列になっている。A4判、297頁、2017年6月。全国ホタル研究会発行。2000円(〒808-0146 福岡県北九州市若松区高須西1-14-13)

 

秋田県立博物館編集・発行「特別展 妖怪博覧会~秋田にモノノケ大集合!~」

平成29年7月15日から8月27日まで同館で開催された特別展の展示図録である。構成は「第一章 異界への怖れ」「第二章 姿をあらわした妖怪」「第三章 神と異形(いぎょう)のモノ」「第四章 秋田ゆかりの妖怪」「第五章 身近になった妖怪」となっており、「付」として「平田篤胤と妖怪」(畑中康博)、「妖怪が語られる背景~菅江真澄の記録から」(松山修)、「秋田の妖怪」(丸谷仁美)を収載している。また、「妖怪に関する覚書 「妖怪博覧会~秋田にモノノケ大集合!~」展によせて」(高橋正)も収載されている。「タマシとタマシイ」「熊野観心十界曼荼羅に見る四十九餅と死生観」「カッパが教えてくれたもの」「うぶめとおぼう力の話」「妖怪を語る会」「秋田のこっくりさん」「新聞記事になった秋田の妖怪」など、地地元の視点でまとめられた「コラム」が面白い。A4判、105頁、2017年7月。(〒010-0124 秋田県秋田市金足鳰崎字後山52)

 

三木綾編集「海難と救助―信仰からSOSへ―」

2017年2月18日から4月16日まで横浜みなと博物館で開催された企画展の図録である。構成は「1 江戸時代の海難と救助」「2 社会に影響を与えた海難事故」「3 海難防止策のうつりかわり」「4 人命の救助と船体の復旧」となっている。「海難事故・海難防止関連略年表」が付されている。日本では貞応二(1223)年に成立した廻船式目により、海難救助・船舶・廻船儀礼・共同海損などの海運慣習三一ヶ条が成文化されている。「板子一枚下は地獄」とは、船乗りや漁師など海を生業の場所とする人々がしばしば口にする言葉である。気象予報も航路標識も未整備であった時代において、海難事故を未然に防ぐ手立ては神仏に祈願する以外になかった。本展示では、江戸時代から現代まで海難事故とその救助、防止の歴史を振り返って紹介している。A4判、40頁、2017年2月。横浜みなと博物館発行。(〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-1-1)

 

野上建紀「伊万里焼の生産流通史―近世肥前磁器における考古学的研究」

考古資料から肥前磁器の歴史について、生産と流通の側面から明らかにしている。構成は「序章」が「はじめに」「研究史と課題」「本書の構成」、「第1章 生産の形態と変遷」が「第1節 生産施設」「第2節 陶工の動向」「第3節 製品の変遷」[第1章資料]、「第2章 流通の形態と変遷」が「第1節 流通に関する遺跡」「第2節 肥前陶磁の流通に関する遺跡」「第3節 肥前陶磁の積出し港」「第4節 肥前陶磁の流通に関する航路及び形態について」、「第3章 窯業圏の成立と地域的窯業圏の形成」が「第1節 三藩境界域窯業圏の成立」「第2節 地域的窯業圏の形成」、「第4章 海外流通の開始と拡大」が「第1節 清朝の海禁政策と陶磁器貿易」「第2節 肥前陶磁の輸出磁器」、「第5章 アジア・アフリカ・ヨーロッパへの流通」が「第1節 アジア・アフリカ・ヨーロッパ出土の肥前陶磁」「第2節 アジア・アフリカ・ヨーロッパ出土の肥前陶磁の傾向と生産窯」「第3節 アジア・アフリカ・ヨーロッパへの海外輸出」、「第6章 ガレオン貿易による流通」が「第1節 マニラに持ち込まれた陶磁器」「第2節 ガレオン貿易ルート上で発見された肥前陶磁」「第3節 フィリピンにおける需要と流通」「第4節 マニラへの流通ルート」「第5節 ラテンアメリカにおける需要と流通」「第6節 各地域の相互比較」「第7節 大西洋ルート」「第7章 窯業圏の拡大と地域的分業化の確立」が「第1節 有田窯業圏の窯場の再編成」「第2節 波佐見窯業圏の拡大」「第3節 地域的分業化の確立」、「第8章 磁器の量産化と生産機構の変容」が「第1節 展海令以後の窯業圏の様相」「第2節 国内市場向け製品の本格的量産化」、「第9章 国内市場の流通販路の拡大」が「第1節 文献史料にみる肥前陶磁の流通量」「第2節 筑前商人と国内流通」、「第10章 生産機構の変容」が「第1節 地方窯への技術伝播」「第2節 肥前の窯業圏の内部変化」「第3節 塩田川流域の窯業圏」「第4節 生産機構の変容」、「第11章 肥前窯業圏の生産機構の特質」が「 第1節 磁器原料を基盤とする生産機構」「第2節 分業システムに支えられた生産機構」「第3節 流通機構と密接な関わりをもつ生産機構」、「結論」となっている。本書では、国際的な商品として「陶磁の道」を運ばれ海外市場に輸出された肥前磁器の歴史について、生産・流通という新たな視点から迫っている。これまで美術品としての研究が主であった研究対象を社会的な側面から浮き彫りにした一冊である。B5判、649頁、平成29年2月。中央公論美術出版発行。30,240円。ISBN 978 -4 -8055 -0776 -6(〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-10-1)

 

麓和善・濱田晋一・森崇史・戸上薫「尾州廻船内海船船主 内田佐平二家住宅 保存修理工事報告書」

明治5(1872)年頃の建築当初から改築されずに現在まで受け継がれた文化財建造物の保存修理工事についてまとめている。構成は「第1章 概説」が「第1節 建造物の概要」「第2節 修理事業の概要」、「第2章 沿革」、「第3章 調査」が「第1節 屋敷構え」「第2節 主屋」「第3節 隠居屋」、「第4章 施工」が「第1節 第1期工事」「第2節 第2期工事」「第3節 第3期工事」、「図版」が「東納屋・表門・西納屋」「主屋」「隠居屋・土蔵」「史料」、「図面」となっている。家屋の修理過程で判明した内部構造や歴史などが興味深い。A4判、115頁、平成29年3月。南知多町教育委員会発行。(〒470-3412 愛知県知多郡南知多町豊浜字須佐ヶ丘五)

 

栃木県環境森林部自然環境課発行「国際避暑地 中禅寺湖畔の記録―英国大使館別荘記念公園一般公開記念誌」

奥日光の中禅寺湖畔にある、イギリスおよびイタリアの旧大使館別荘についてまとめた冊子である。構成は「Ⅰ 国際避暑地 建物写真」「Ⅱ 国際避暑地日光の歴史」「Ⅲ 旧英国大使館別荘」「Ⅳ 西六番園地・旧イタリア大使館別荘・中禅寺湖畔ボートハウス」「Ⅴ 幕末維新の英国外交官アーネスト・サトウ」となっており、「国際避暑地の歩み(年表)」が付されている。中禅寺湖畔には本書で紹介されているイギリス・イタリアだけではなく、フランスやベルギーなどの諸外国外交官が過ごした別荘がある。明治20年代から昭和初期にかけてヨーロッパのリゾート文化が出現したような避暑地として栄えた中禅寺湖畔避暑地の歴史と、その歴史を伝えている旧別荘等の建築物を紹介する、興味深い一冊である。A4判、64頁、平成28年6月。280円。(〒320-8501 栃木県宇都宮市塙田1-1-20)


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