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古書通信

中野好夫著書目録1【日本古書通信 編集長だより30】

中野好夫(1903=1985)の著書目録を、「研究書・評伝・評論・エッセイ集」「翻訳・編著・著作集」の二回に分けて掲載する。基本的に家蔵本によったので脱落があるかもしれない。文芸春秋社の『文学・人間・社会』(昭和51)の巻末に比較的詳細な著書目録が掲載されているが、書誌的事項の記載がなく、少し脱落や、改定版の記載がない。刊記は西暦を用いた本もあるが、統一を考え元号を用いた。
中野は肩書を「文芸評論家」としている場合が多いが、著作は、シェイクスピアを中心とする英文学研究と翻訳、アラビアのロレンスなどの評伝、沖縄問題を中心とする社会評論、その他の文芸的な評論の四つに大きく分けられるが、生涯の著作を俯瞰して、私個人的には、日本には珍しい本格的な伝記作家と位置付けることが出来るのではないかと考えている。しかも、その評伝の対象は、内部に燃えるような情熱と衝動が自分自身を焼き尽くしてしまうような、いわゆるエネルギッシュで型破りな人物が殆どである。彼らは、どことなく、シェイクスピアの「ヘンリー四世」に登場する、フォルスタッフに似ており、ある意味では中野本人とも共通する部分が多いように思う。
まもなく、平成の時代も終わるが、改めて戦後70年を振り返るとき、中野の歩んだ道とその著作は非常に参考になる点が多いように思う。

研究書・評伝・評論・エッセイ集
バニヤン(BUNYAN)英米文学評論叢書12 研究社 新書判 158頁 カバー 非売品(予約出版か)昭和9年7月
アラビアのロレンス 岩波新書73 岩波書店 新書判 205頁 50銭 昭和15年9月 (昭和38年12月改訂版 263頁 150円)
文学試論集 中央公論社 B6判、454頁 2円60銭 昭和18年1月
文化の将来 5氏共著(「英国小論」を執筆) 共著者河上徹太郎、吉川幸次郎、桑原武夫、河盛好蔵 筑摩書房 B6判 204頁(98~140頁)2円50銭 昭和20年6月
反省と出発 三想文庫1 中央文化社 B6判 248頁 12円 昭和21年6月
同 再版 中央文化社 B6判 273頁 28円 昭和22年4月 
教養と文化 若き女性のために 平凡社 B6判 196頁 55円 昭和22年9月
エリザベス朝演劇(本体はエリザベス朝演劇講話) 新月社 B6判 183頁 カバー 50円(昭和23年9月再版100円)昭和22年9月
エリザベス朝演劇講話 八潮書房 B6判 211+10頁 旧版に索引を施す 箱(?)450円 昭和39年6月
文学試論集二 要書房 B6判 378頁 100円 昭和22年10月
英米文学論 現代評論文学叢書4 酣燈社 B6判 292頁 160円 昭和23年10月
怒りの花束 中野好夫評論集 海口書店 B6判 278頁 150円 昭和23年10月
シェイクスピア研究 8氏共著(「シェイクスピとその時代」「あとがき」執筆)新月社 A5判 322頁 280円(昭和25年再版時) 昭和24年6月
南極のスコット 梟ぶんこ14 小山書店 B6判 163頁 昭和24年
南極のスコット 小山書店 B6判 164頁 箱 200円 昭和29年3月
生活の思索 思索叢書 池田書店 B6判 266頁 170円(昭和26年6月再版)昭和25年5月
良識と寛容 市民文庫44 河出書房 文庫判 177頁 70円(昭和26年12月三版) 昭和26年7月
文学の常識 要選書11 要書房 B6判 169頁 カバー 140円 昭和26年3月(昭和26年11月4版は並製 140円)
私の平和論 要書房 B6判 176頁 150円 昭和27年3月
文学試論集三 東京大学出版会 B6判 249頁 240円 昭和27年8月
世界史の十二の出来事 一時間文庫 新潮社 B40 200頁 170円 昭和29年2月
人間の名において 東京大学出版会 B6判 219頁 180円 昭和29年7月
現代の作家(編・談話の聞き出し役)岩波新書 岩波書店 新書判 310頁 130円 昭和30年9月
随想集ぼらのへそ 弥生書房 B6判 198頁 カバー 230円 昭和32年6月
平和と良識 現代を生きる考え方5 実業之日本社」 B40 238頁 カバー 210円 昭和32年10月
中野好夫集 現代知性全集19 日本書房 B6判 270頁 カバー 250円 昭和34年4月
問題と視点 私の時評 角川書店 B6判 240頁 箱 340円 昭和34年12月
銭屋五兵衛 日本文化研究9 新潮社 A5判 43頁 定価非表示 昭和36年5月
最後の沖縄県知事(書名の文を含む8編のエッセイ集)文芸春秋社 B6判 196頁 カバー 昭和36年12月
人間うらおもて 新潮社 B6判 230頁 カバー 340円 昭和37年1月
沖縄問題二十年 新崎盛暉共著 岩波新書562 岩波書店 新書判 244頁 150円 昭和40年6月
私の憲法勉強-嵐の中に立つ日本の基本法 講談社現代新書 新書判 224頁 240円 講談社 昭和40年9月
シェイクスピアの面白さ 新潮選書 新潮社 B6判 231頁 カバー 昭和42年5月
人間の死にかた 新潮選書 新潮社 新書判 235頁 370円 昭和44年6月
スウィフト考 岩波新書718 岩波書店 新書判 232頁 150円 昭和44年6月
沖縄・70年前後 新崎盛暉共著 岩波新書761 岩波書店 新書判 219頁 昭和45年8月
英文学夜ばなし 新潮選書 新潮社 B6判 253頁 カバー 450円 昭和46年12月
蘆花徳冨健次郎 第一部 筑摩書房 B6判 458頁 カバー 1700円 昭和47年3月
蘆花徳冨健次郎 第二部 筑摩書房 B6判 461頁 カバー 1700円 昭和47年9月
蘆花徳冨健次郎 第三部 筑摩書房 B6判 500頁 カバー 1900円  昭和49年9月
沖縄と私 時事通信社 B6判 353頁 500円 昭和47年3月
忘れえぬ日本人 筑摩書房 B6判 304頁 カバー 700円 昭和48年7月
歴史の中の肖像―デーモンに憑かれた人間 筑摩書房 B6判 カバー 950円 昭和49年10月
沖縄戦後史 新崎盛暉共著 岩波新書 岩波書店 新書判 234頁 280円  昭和51年10月
文学・人間・社会 人と思想 文芸春秋社 B6判 497頁 カバー 1,800円 昭和51年11月
風前雨後 現代日本のエッセイ 毎日新聞社 A5判 302頁 箱 昭和51年12月
酸っぱい葡萄 みすず書房 B6判 437+7頁 カバー 1800円 昭和54年9月
人は獣に及ばず みすず書房 B6判 394+3頁 カバー 1900円 昭和57年6月
主人公のいない自伝 ある城下市での回想 筑摩書房 B6判 151頁 カバー 昭和60年7月
司馬江漢考 新潮社 A5判 242頁 箱 3500円 昭和61年2月
悪人礼賛 中野好夫エッセイ集 ちくま文庫 筑摩書房 文庫判 331頁 690円 平成2年12月
英文学夜ばなし 同時代ライブラリー152 岩波書店 文庫判 269頁 950円 平成5年7月
伝記文学の面白さ 同時代ライブラリー216 岩波書店 文庫判 215頁 900円 平成7年2月
参考
『一月一話―読書こぼれはなし』(昭和53・岩波新書)『完本一月一話―読書こぼればなし』(平成7年・岩波書店・B6判、347頁、2427円、カバー)の著者・淮陰生は、中野好夫と言われている。

樽見博