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書店に並ばない本

書店に並ばない本3(白戸満喜子)

以下は「日本古書通信」掲載「特殊文献の紹介」欄に紹介されたものの一部です。
入手などについては、各書末尾の発行所へ直接お問い合わせ下さい。販売を主としたものではありませんので、丁寧な対応をお願いいたします。(日本古書通信社)

 

東京都立多摩図書館編集・発行「創刊号コレクション目録 ―雑誌に見る明治、大正そして昭和―」

東京都立多摩図書館が2016年12月末現在までに所蔵している明治から昭和に刊行された雑誌創刊号を年代順に収録している。「巻頭言」として「人はなぜ創刊号にひかれるのか」(難波功士)を収載、構成は「所蔵創刊号の中から(表紙紹介)」「創刊号コレクション」「索引」(タイトル索引・出版社50音索引)となっており、「付録1 当館の所蔵タイトルの創刊号一覧」「付録2 複製版の創刊号一覧」を収録している。「所蔵創刊号の中から(表紙紹介)」に掲げられている書影は、日本の雑誌文化を総覧できる。出版史・文化史のみならず、さまざまな研究領域に活用できる目録である。A4判、241頁、平成29年1月。(〒185-8520 東京都国分寺市泉町二―二―二六 )東京マガジンバンク

 

甲賀市教育委員会編集・発行「染型紙調査報告書 ―甲賀市水口歴史民俗資料館所蔵―」

元紺屋に残された2113枚の型紙について平成24年度から平成28年度に甲賀市教育委員会が実施した調査成果をまとめた報告書である。構成は「第1章 調査の経緯と体制」が「第1節 調査の経緯」「第2節 調査体制」「第3節 調査日誌抄」、「第2章 論考」が「第1節 水口歴史民俗資料館の型紙調査について」(生田ゆき)「第2節 型紙に残された文字情報からわかること」(鈴木亜季)、「型紙図版」「商印図版」となっている。「型紙図版」は型紙全点の写真を所収している。A4判、229頁、2017年3月。1500円。(〒520-3308 滋賀県甲賀市甲南町野田810)
甲賀市文化財報告書 第30集

 

千葉県立関宿城博物館編集・発行「鰯は弱いが役に立つ ―肥料の王様 干鰯―」

平成29年10月3日から12月3日まで同館で開催された企画展の展示図録である。構成は「第1章 房総の漁撈 ~鰯、海で捕らわる~」「第2章 房総の干鰯生産 ~鰯、肥料になる~」「第3章 海を介した広域流通 ~鰯、海を渡って関西で大活躍~」「第4章 東国干鰯問屋の興隆と対立 ~鰯、浦賀・深川へ大集合~」「第5章 内川廻しルートの干鰯流通 ~鰯、利根川筋をゆく~」「第6章 関東で使われる干鰯 ~鰯、内陸の村々でも大活躍~」「第7章 伝えられる鰯の文化 ~鰯と人のつきあい~」となっており、「コラム」として「関宿干鰯問屋喜多村家の江戸進出」(原直史)「関宿と北関東の干鰯流通」(白川部達夫)を収載している。鰯は食用だけではなく、かつては重要な肥料であった。鰯を干した「干鰯(ほしか)」、ゆでて締め固めた「〆粕(しめかす)」といった鰯の肥料は、稲作は勿論のこと、木綿や麻、藍、茶、煙草の生産に欠かせない存在であった。生活を豊かにした干鰯の全貌がわかる一冊である。A4判、77頁、平成29年10月。1000円。(〒270-0201 千葉県野田市関宿三軒家143―4)

 

吉武牧子・雨森久晃編著「重要有形民俗文化財「蒲江の漁撈用具」保存修理報告書」

漁撈用具の調査収集活動の成果をまとめ、用具類を分類整理している。構成は「第1章 はじめに」「第2章 修理に至る経緯と修理の概要」「第3章 漁撈用具の保存修理」「第4章 ジビキアミブネの保存修理」「第5章 まとめ」となっている。本書に収録されている漁撈用具類は、さまざまな場面で用いられる漁具のみならず、信仰に関連する用具も含まれている。また元来は消耗品である道具に対する保存修理の方針と報告は貴重であり、非常に興味深い。A4判、82頁、2017年3月。佐伯市教育委員会発行。(〒876-0853 大分県佐伯市中村東町6―9)
平成13~28年度国庫補助事業重要有形民俗文化財 蒲江の漁撈用具保存修理事業に伴う報告書 佐伯市文化財調査報告書 第9集

 

山形県立うきたむ風土記の丘考古資料館編集・発行「木と生きる ~弥生・古墳時代の木製品~」

平成29年9月16日から12月3日まで同館で開催された第25回企画展の展示図録である。構成は農耕が始まった弥生時代から古墳時代の木の利用を紹介する「序章 木と生きる」、大陸から米作と金属器が伝播して変化した木工に関連する「第1章 住と木工」、食料の調達・加工や作物の種子を紹介する「第2章 食料の獲得と加工」、多彩でダイナミックな器を紹介する「第3章 容器」、織機や楽器など生活を豊かにするための木製品に関連する「第4章 衣・装・調・祈」となっている。国土の三分の二が森林である日本ならではの原初生活をうかがうことができる一冊である。A4判、71頁、平成29年9月。1500円。(〒992-032 山形県東置賜郡高畠町安久津2117)

 

人間文化研究機構国立歴史民俗博物館編集・発行「Urushiふしぎ物語 ―人と漆の12000年史」

2017年7月11日から9月3日まで国立歴史民俗博物館、9月15日から10月22日まで浦添市美術館で開催された企画展示の展示解説図録である。構成は「第1章 ウルシと漆」「第2章 漆とてわざ」「第3章 漆とくらし」「第4章 漆のちから」「第5章 漆はうごく」「第6章 これからの漆」となっている。また展示内容以外にも、「コラム1 漆の樹種同定」「コラム2 漆のDNA」「コラム3 放射性炭素年代測定」「コラム4 漆紙文書」「コラム5 安福寺所蔵の夾紵箱」「コラム6 夾紵(苧)とはなにか?」「コラム7 初期蒔絵」「コラム8 クロスセクション観察法 ―漆の塗膜断面からわかること―」「コラム9 石鏃膠着物の科学分析」「コラム10 菅江真澄と八郎潟」「コラム11 熱分解-GC(ガスクロマトグラフィー)/MS(質量分析) ―漆の化学分析からわかること―」「コラム12 ストロンチウムSr同位体比分析」「コラム13 蛍光X線分析」という充実したコラムを収載している。論考として「「Urushiふしぎ物語 ―人と漆の12000年史」開催にあたって」(日高薫)、「縄文時代の漆文化 ―最近の二つの研究動向―」(工藤雄一郎)、「近世における漆器生産のひろがりと流通」(岩淵令治)、「漆器の領分 ―婚礼調度の世界―」(竹内奈美子)、「琉球漆器」(宮里正子)を収載している。本展示では、最新の研究で明らかになった日本における漆文化を総合的に紹介しており、国宝・重要文化財などの優れた漆工芸品をはじめ、多彩な漆の歴史を伝える出土品、漆を生業としてきた人々の道具などの民俗資料に至るまで漆に関連するものを多種多様な視点から紹介している。こうした展示内容は、美術史学・考古学・文献史学・民俗学・植物学・分析科学の研究者が集結した「学際的研究による漆文化史の新構築」の成果であり、東アジアやヨーロッパとの原料や技術の交流や、自然科学的分析手法による最新研究をあますところなく紹介している。A4判、295頁、2017年7月。(〒285-8502 千葉県佐倉市城内町117)


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