あの作家は●月生まれだった <3月編>
今月ご紹介する作家は樋口一葉、水上勉、海音寺潮五郎の3名です。
樋口一葉(ひぐち・いちよう)
明治5年3月25日(1872)生-明治29年11月23日(1896)没
小説家、歌人。東京都生。本名なつ。和歌と古典教養を中島歌子の萩の舎で、近代的な文学観を半井桃水に学ぶ。良家の華やかさと貧困の労苦を知る女性。その経験は作品に生かされ、「にごりえ」「十三夜」「たけくらべ」など、明治女性の哀感を優雅な和文で紡ぎ出す。大量の日記類も文学的価値が高い。
【話題ピックアップ】
●樋口一葉、原稿料倍増!
「明治28年(1895)1月 樋口一葉の「たけくらべ」は「文学界」(明28・1~29・1)に7回分載されたのち、「文芸倶楽部」(明29・4)に一括再掲載されて鷗外、斎藤緑雨、幸田露伴の絶賛を経て一葉の名は一躍知れ渡る。これまで30銭の稿料が「文芸倶楽部」では1枚70銭となる。」
浅井清・市古夏生監修『作家の原稿料』
●樋口一葉の「たけくらべ」未定稿から、作品の生成を探る
日本近代文学館編『近代文学草稿・原稿研究事典』
【自筆物を手に入れる】
樋口一葉未定稿幅
『断片・書入れ』4より
1,800,000円・1幅
水上勉(みずかみ・つとむ)
大正8年3月8日(1919)生-平成16年9月8日(2004)没
小説家。福井県生。生家が貧窮を極めたため、9歳で仏門の徒弟となる。それより終戦まで放浪と苦学の生活が続く。処女出版「フライパンの歌」がベストセラーに。「雁の寺」で直木賞。ほかに作品として推理小説「飢餓海峡」、菊池寛賞の評論「宇野浩二伝」、谷崎潤一郎賞の「一休」等。
【話題ピックアップ】
●妻の本音「もう少し貯金ができるまで働かせてほしい」
「昭和34年(1959)8月 水上勉、『霧と影』で初めて「何万円か」の印税内金を得る。それを見せても妻は仕事をやめないという。1冊の本が出て、仮にそれが好評でも一家の暮らしが成り立つわけではなく、次に仕事をしなければ印税の切れ目が生活の切れ目となる。その時にまた働きに出ようとしても難しい。もう少し貯金ができるまで働かせてほしい、というのが妻の言い分だった。」
浅井清・市古夏生監修『作家の原稿料』
【自筆物を手に入れる】
水上勉草稿
1帙 『指の舌』 ペン書 400字詰自家用箋28枚完
380,000円
海音寺潮五郎(かいおんじ・ちょうごろう)
明治34年3月13日(1901)生-昭和52年12月1日(1977)没
小説家。鹿児島県生。国学院大学高等師範部国漢科卒。「天正女合戦」「武道伝来記」で直木賞。史料と文学の融合によって懐の深い歴史文学を展開する。代表作として「天と地と」「平将門」「海と風と虹と」等。
【自筆物を手に入れる】
海音寺潮五郎書簡
緑川玄三宛 毛筆ペン書 巻紙便箋 封筒付 昭45・3・3~48・10・2付
480,000円・34通