紙魚の昔がたり
倒産出版社の本 【紙魚の昔がたり29】
(反町) 戦後は、とにかく紙もない、印刷業界もなかなか復活しないということで、新本が少なかったのですが、それがだんだん復活して、出るようになる。出たものがみな大変によく売れる。売れるから、各社が競争的にドンドン出版する。やがてそれがオーバー・プロダクションに転化した。河出などはその典型的なもので、一時は大変な景気でしたが、間もなく行き過ぎになる。結局行き詰まって、身動きが出来ない。最終的には破産して投げ出す。そういうケースが三十年代に次々殖えたわけでしょうね。それは大体いつ頃から始まったんですか。いつ頃最も盛んだったんですか。
(八木) 私が松坂屋にいた頃ですから、二十六、七年頃からでしょう。松坂屋の別館に特価本部をつくりました。よく売れたので、二階の売場にも並べました。
ですから、二十年代の終わり頃には盛んでした。それからですね。
(反町) 現在は、その当時ほどは盛んじゃないようですが、何年頃が全盛だったんですか。四十年頃ですか。
(八木) 全盛時代っていったらおかしいんですが、大口の一番よく出たのは、河出さんの取り引きがあった頃ですね。