「日本古書通信」2021年1月号(12月30日発売)
主要目次
特集
八木書店 近代日本文人葉書6
中島国彦 漱石作品の原稿をたずねて
上野 暁 戦後史の暗部「戦争孤児」はどう描けれてきたか
大野隆司 今時、新聞挿絵を木版画で作る者
鈴木地蔵 まきちゃん飯能の文士たち
竹居明男 戦前の「内容見本」抄―書架蔵のコレクションから2
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集16
岡崎武志 昨日も今日も古本さんぽ123大阪
森 登 銅・石版画万華鏡 161
小田光雄 古本屋散策 225
出久根達郎 本卦還りの本と卦 165 十二支
中島義彦 文学堂書店の思い出 内藤勇氏追悼・佐登子夫人讃
漱石作品の原稿をたずねて(中島国彦)より
わたくしが漱石の原稿の存在に注意するようになったのは、『漱石全集』昭和三年版の「月報」第1号(1928・3、岩波書店)の余白に載せられていた「現存せる原稿」という、22点の所在記録を見た時からである。こんなに主要作品の原稿が残っていた事を知ったのは、驚きだった。しかし、高浜虚子から水落露石(1919歿)に譲られた『吾輩は猫である』原稿が息子の水落庄兵衛に伝わってはいるが、実は作品の後半の一部で、有名な冒頭部分は残っていないと知った時、当時の原稿の扱い方を思い、残念に思った記憶がある。次の詳しい情報が、松岡譲『漱石先生』(1934・11、岩波書店)所収の「原稿の戸籍」の一文だった。確認された原稿の状態の記述もあり、ありがたい一文だ。
こうした記録は、「日本古書通信」九六号(1938・3)の「夏目漱石原稿所在一覧 幷亡失所在不明原稿」の表に受け継がれる。書き方はAの記載を踏襲、全部で27点に増え、「全集編輯当初より不明なもの」として、『猫』の大部分、『坑夫』『文鳥』『夢十夜』等が挙げられ、「当初判つてゐたもので、其後亡失及不明のもの」という部分には、『琴のそら音』『三四郎』『行人』の3点が記された。
【お知らせ】
本誌は来年3月号で通巻1100号を迎えます。それを記念して、八木書店古書部が30年間に亘って蒐集してきた、近代文人の葉書1700名1700枚を全て画像付きの販売目録を兼ねた記事として、本年8月号より3年間に亘り掲載していくことになりました。講談社『日本近代文学大事典』人名索引に掲載された文人を五十音順に掲載していきます。
ネットでの公開販売はなく、本誌定期購読者のみへの販売となります。
連載を保存することで、近代文人筆跡の参考文献となります。この機会に定期購読の契約をお勧めいたします。
1月号 12月30日発売 定価750円(送料79円)※ご注文はメールまたは電話、FAXで。
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