「日本古書通信」11月号(90巻11号)11月15日発売
主要目次
川島幸希 「署名本の世界」みたび29堀辰雄『風立ちぬ』立原道造宛
竹内栄美子 本の文化を考える―中井正一から山代巴へ
塩村 耕 ひとり灯のもとに古日記をひろげて
児玉佳久 手探り、手作り、本作り
土肥寿郎 鷹山堂・沖田信悦著『植民地時代の古本屋たち』の「増補新装版」刊行
竹居明男 小金井良精日記に見える柳田國男―全集「柳田國男年譜」補遺
中山信行 古本屋最後の仕事(6)肉筆特集自家目録に向けて
真田幸治 小村雪岱の雑誌表紙絵「長唄の日本」
小村雪岱の雑誌目次絵「中央演劇」
河野 実 一寸随想18 「小林清親」の落ち穂拾い
古川富章 HAIKUの多行表現史(15)山崎青鐘の「山脈」と吉岡禅寺洞の句集『新墾』
小山力也 リレー連載「ミステリ懐旧三面鏡」その50《垣間見たミステリ界重鎮たちの蔵書》
高木浩明 古活字探偵事件帖35 川瀬一馬と古活字版
田坂憲二 吉井勇の読書生活35 谷崎潤一郎を読む6
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集(74)雀の夕顔
中嶋 廣 一身にして二生を経る111
飯澤文夫 続PR紙誌探索(79)媽祖便也
安藤武彦 徳元作、能の独吟「江口のわたり」まで
宮尾與男 近世戯画とその周辺32 連続絵の戯画―北斎の「踊獨稽古」と「北斎漫画」3-2
能勢 仁 ネパール・カトマンズ ピルグリムズ書店
その他
本の文化を考える―中井正一から山代巴へ(竹内栄美子)より
本といえば、神保町の古書店街はもちろんのこと、大学や地域の図書館に多くの書籍が架蔵され、なかでも国立国会図書館は調査研究には欠かせない重要な図書館で、私も学生時代から大変お世話になってきた。さきごろ、9月27日から10月6日まで新宿の紀伊國屋サザンシアターで上演されていた劇団民藝による『聴衆0(ゼロ)の講演会』(作・演出嶽本あゆ美)は、国立国会図書館の初代副館長に任命されて図書館法成立に尽力した中井正一の半生を描いた舞台である。今年、2025年は、戦後80年であることに加え、中井正一生誕125年であり図書館法施行75年というメモリアルイヤーであった。
中井正一は京都大学で美学を講じていた学者であり、戦前は京都で自由を求めて反ファシズム運動を、戦後は広島で民主主義文化運動を推進した人物だったが、国会図書館副館長としては、愚劣な戦争を繰り返さないために図書館が「知」の殿堂としてデマゴーグに対抗する拠点になることを目指していた。「真理が我らを自由にする」という国会図書館正面カウンター上部に掲げられたフレーズ、それは中井正一そのものだと舞台では表現されていた。いまは忘れられてしまっているけれども、中井の果たした仕事は戦後民主主義の出発点として重要なものだった。
11月号 11月15日発売 定価850円(送料79円) ※ご注文はメールまたは電話、FAXで。
株式会社日本古書通信社
千代田区神田小川町3-8駿河台ヤギビル5F
TEL03-3292-0508
FAX03-3292-0285
e-mail:kotsu@kosho.co.jp
http://www.kosho.co.jp/kotsu/


