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日本古書通信

「日本古書通信」10月号(89巻10号)10月15日発売

主要目次

特集 店舗のある古本屋一覧2024(3)北陸・東海・名古屋
川島幸希 「署名本の世界」みたび16 正宗白鳥『パラドックス』上司小剣宛
森  登 一寸随想5 中川昇の改良銅版
小野純一・小山力也・北原尚彦 ミステリ懐旧三面鏡座談会
古川富章 HAIKUの多行表現史(2)俳誌「新半面」「半面」「緑熱」「煤煙」の先駆性
茅原 健 伊勢草医・畑嘉門小伝
竹居明男 林屋辰三郎「著述目録」補遺(上)架蔵の「内容見本」掲載文から
小野純一 リレー連載「ミステリ懐旧三面鏡」37《オンちゃんの再刊を熱望する》
小林信行 平田禿木をめぐる人々鶴田久作(6)
高木浩明 古活字探偵事件帖22 浜男か浜雄か
田坂憲二 吉井勇の読書生活22 志賀直哉を読む
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集61 蓬莱山 蜃気絵
三好 彰 『虞美人草』に見るルビになった西洋語
飯澤文夫 続PR紙誌探索(66) 冊府
樽見 博 神戸大学山口誓子記念館
その他

中川昇の改良銅版(森 登)より

最近の関心事の一つに中川昇の改良銅版がある。明治23年(1880)堀健吉が創製した写真網目版の登場と共に、僅か三年ほどで忘れ去られた製版技術である。両方ともに時代の先端を行く凸版技術であった。

(略)

鋳造活字による凸版印刷が、日本で普及したのは、欧州に遅れること430年後の明治5、6年前後(1872・73)である。使用する図版は、洋の東西を問わず板目木版によっていた。銅版は別紙に刷られて挿入された。それに風穴を開けたのは、イギリスのトーマス・ビューイック(1753―1828)で、18世紀末に創製された木口(こぐち)木版であった。

木口木版は板目木版と異なり、ツゲやクルミなどの固い版材の横断面(木口)を版木に使用し、直刻銅版に用いるビュランという鋭利な彫刻刀で、筋彫りした後、彫り残した面にインクを付着させて印刷する。それゆえ活版印刷への使用が可能であった。しかも鋭利で微細な線が彫刻できたために、写真のようなリアルな表現が可能となった。

19世紀の欧米では広く普及し、『イラストレイテッド・ロンドンニュース』や『ツール・ド・ルモンド』のように報道や正確性を求められた刊行物等では、写真の代用として木口木版が紙面を飾るようになる。江戸期の日本にも齎されていたはずだが、その版面が繊細であるために銅版と思われていたようである。

日本の木口木版はフランスで技術を学んだ合田清が、明治20年(1887)生巧館を開業したことに始まる。しかし、2年前の明治18年9月13日附『絵入朝野新聞』では、「……今般弊社の社員と致し候島崎天民子が多年の刻苦と経験とを以て練習自得仕つり候写真木版と云ヘるハ是亦無類独占のものに御座候間先づ其の見本を本日の紙上に掲げ以後陸続登載可致候」と社告で告知し、見よう見まねで会得した日本式「木口木版」即ち「写真(西洋)木版」を掲載している。


10月号 10月15日発売 定価850円(送料79円) ※ご注文はメールまたは電話、FAXで。

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