活字をはみだすもの(第28回)開催につきまして
平素は格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。
さて、この度当店では前回に引き続き、近代文学特別講座「活字をはみだすもの」(第28回)を開催する運びとなりました。日本近代文学を専門とされる諸先生方に、当店所蔵の自筆資料を研究素材として利用して頂き、そこからどんな事柄がわかり、どんな可能性が見えてくるのかを解き明かして頂きます。実物を間近で見られるまたとない機会ですので、何卒奮ってご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。
【募集人数】 各回10人程度、延べ40人の募集となります。
【講座の内容】
■芥川龍之介と新潮社 ―翻訳家 和気律次郎に宛てた書簡からの気づき
■講師 庄司達也 先生 11月28日(土) 13:00~14:00
芥川龍之介がその著書の1冊を古書店で求めたことがきっかけとなり、翻訳家である和気律次郎との交誼が始まったと云われています。奈良に住む和気に宛てた書簡からは、大正9年当時の芥川と新潮社との関係が垣間見えます。その際に使用された封筒の意匠や筆跡などにも目配りをしつつ、1本の書簡が伝えることがらを愉しく読み解きたいと考えています。
〔講師紹介〕 横浜市立大学教授、1961年生。芥川龍之介の〈人〉と〈文学〉を主たる研究テーマとし、出版メディアと作家、読者の関係にも関心を持つ。また、作家が聴いた音楽を蓄音機とSPレコードで再現するレコード・コンサートを企画・開催。著書に『100年読み継がれる名作 芥川龍之介短編集』(監修、世界文化社、2024)など。
■石川啄木、最後の挑戦 ―雑誌『樹木と果実』に関わる書簡より
■講師 大木志門 先生 11月28日(土) 15:00~16:00
明治44年、石川啄木が土岐哀果と組んで刊行しようとした幻の文芸雑誌『樹木と果実』があります。啄木が哀果と出会って意気投合し、創刊に向けて尽力しましたが、印刷所のトラブルなどで結局世に出ることはありませんでした。翌年に啄木は失意の中で病死することになります。雑誌への強い意欲を病室から小樽時代の友人たちに向けて著した90行以上にわたる書簡を題材に、この啄木晩年の一大事業とも言うべき事象を考えてみます。
〔講師紹介〕 東海大学教授、1974年生。自然主義文学・私小説を中心に研究。主な著書・編著に『徳田秋聲と「文学」』(鼎書房、2021)、『石川啄木作品アンソロジー エッセンシャル啄木』(田畑書店、2024)、『文士の「妻」たち』(共編、文学通信、2026)など。
■直木三十五と借金 ―大阪朝日新聞社への書簡から
■講師 中澤 弥 先生 12月5日(土) 13:00~14:00
直木賞に名を残す直木三十五の生涯は、借金との戦いでもあった。「芸術は短く貧乏は長し」とは、直木が残した言葉として広く知られていて、旧宅跡の文学碑にも刻まれている。ただ、貧乏とはいっても小説が売れなくて貧乏生活に甘んじていた訳では無く、流行作家として多額の収入を得る時期もあったわけで、その原因は直木のとてつもない浪費癖にあったともいえる。今回は、負債から逃れようと策を弄する書簡を取り上げながら、華麗なる直木三十五の借金ライフを振り返っていこう。
〔講師紹介〕 多摩大学名誉教授、1959年生。文学と美術・映画などとの交流を主な研究テーマとする。また、横光利一など租界都市上海における日本人作家の活動にも興味を持つ。
■佐藤春夫の漢詩和訳 ―美は言葉の壁を超える
■講師 河野龍也 先生 12月5日(土) 15:00~16:00
日本における漢詩文の受容には、原文に訓点を打って読み下す長い伝統があります。漢文体は高尚なものとして、日本では権威化されてきた歴史もあります。しかし、それで本来の文意が正しく汲み取れるのかを佐藤春夫は問題にし、訓読法に囚われない自由な和訳を工夫しました。漢詩文の鑑賞法を近代化することに大きな役割を演じた佐藤春夫の実際の推敲過程と理念を、「李長吉訳詩三篇」「漢詩をどう読むか」を題材に探ってみましょう。
〔講師紹介〕 東京大学准教授、1976年生。佐藤春夫を中心に、美術と文学ジャンルの交流や作家の異文化理解に関心がある。著書に『佐藤春夫と大正日本の感性』(鼎書房、2019)、編著に『知られざる佐藤春夫の軌跡』(武蔵野書院、2022)、『佐藤春夫読本』(勉誠出版、2015)など。
【会費】無料
【会場】八木書店古書部 三階催事場
【主催】八木書店古書部 (担当八木乾二・小沼貴裕)
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-1-7 (靖国通り沿い・三省堂並び)
営業時間:10:00~18:00 定休:日祝
TEL 03-3291-8221 FAX 03-3291-8223
https://catalogue.books-yagi.co.jp/
mailto:kosyo@books-yagi.co.jp
【参加申込みにつきまして】
konuma.yagibookstore@gmail.com 宛に、お名前、ご住所、ご所属、お電話、緊急時のご連絡先(携帯電話等)、参加希望の回 をお知らせください。
随時ご返事を差し上げますが、業務の都合により、数日間のご猶予を頂くことがあります。
定員超過の場合は先着順とさせていただきます。
また発熱、咳など体調に不安がある方は、参加をご遠慮いただく場合がありますので御了承ください。
【FAQ】
Q なぜこのような会を始めたのですか。
A 平成の初めの頃までは、年末になると文学館や大学図書館の担当者の方々が神保町にいらっしゃり、いろいろ品物を見て回られたものです。担当者の方々にとっては購入品以外の品物を見るよい機会であり、古書業者の側では現場の直接の要望を聞く絶好のチャンスでした。経費節減・支出削減の時流から次第にそのような習慣はなくなってしまいましたが、これではいけないと、ある先生が仰ったのが契機となり、現物を用いた勉強会のような集まりが生まれました。そのコンセプトは年々変化し、今では日本の近代文学に関連した一次資料に興味を持つ方々の緩やかな集まりとなり、半年に一度「物」と「活字」をつきあわせて「活字をはみだすもの」を探すようになりました。はみだしたものゆえ、結論に至らないこともありますが、思考過程と可能性を愉しんでいただければ幸いです。
Q 今までの参加者はどのような方々でしたか。
A 基本的に大学生を想定した講座内容となっておりますが、今まで参加されたお客様は、小学生から八十代の研究者まで、幅広い年齢層の方々です。
Q 大学の授業のように、先生方から指されることはありますか。
A 研究者や専門家の方々にプロのご意見を伺うことはありますが、学校の授業のように講座内容についての知識を確認することはありません。
Q 事前に作品を読んでおいたほうがよいでしょうか。
A 作家や作品についての知識は多い方が愉しめますが、当講座は「物」と「活字」をつきあわせて「活字をはみだすもの」を探すことがコンセプトですので、端的には「物」を見ないと始まらない部分があり、厳密な予習は難しいように思われます。
Q 一講座あたりの参加人数が少ないのはどうしてですか。
A コンセプトに「物」を見ることが含まれるため、どうしても大人数に対応できません。講座机のまわりに十人程度、壁際の椅子のみの席に五人程度の人数で締め切らせていただきます。




