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日本古書通信

「日本古書通信」6月号(90巻6号)6月16日発売

主要目次

●特集
折付桂子 大震災から14年、東北の古本屋(中)東北の古本屋と能登へ
店舗のある古本屋一覧2024(11・完)東京3(神田支部)

川島幸希 「署名本の世界」みたび24太宰治『千代女』津島きやう宛
中山信行 古本屋最後の仕事―肉筆特集自家目録に向けて(1)
小川剛生 神作研一『江戸の通信添削 美濃加治田平井家ものがたり』
多田 昭 徳島県の古本屋の歴史(3)
真田幸治 小村雪岱装幀本雑記11『岡本綺堂全集』と『鉄舟と次郎長』『能因法師』
河野 実 一寸随想13「小林清親」の落穂ひろい(3)
佐々木靖章 近代文学渉猟(8)雑誌『鉄槌』細目2
古川富章 HAIKUの多行表現史(10)大正中期「二行詩」の周辺と俳誌「富士」の重要性
北原尚彦 リレー連載「ミステリ懐旧三面鏡」45《大回り寄り道で見つけた『十三階の女』》
高木浩明 古活字探偵事件帖30安田文庫焼失の謎
田坂憲二 吉井勇の読書生活30谷崎潤一郎を読む・一
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集(69)笠間長者鶴亀物語
中嶋 廣 一身にして二生を経る106
小田光雄 古本屋散策279『チベット』とベースボール・マガジン社
飯澤文夫 続PR紙誌探索(74)手帖
竹居明男 家永三郎「著作目録」補遺―架蔵の「内容見本」掲載文から(2)
安藤武彦 徳元作「有馬在湯日発句」の抄読
その他

古本屋最後の仕事―肉筆特集自家目録に向けて(1)(中山信行)より

昨年夏の明治古典会大入札会で、小津安二郎の佐野周二宛書簡を手張(注文でなく自腹)で買った。自筆のメモと一緒だったとはいえ、一通で百万円を超えた。高いと思ったが思い切って買った。入札会直前には、同業から溝口健二の書簡四通二十数万というのを買ったこともあり、これで今自分がひそかに目論んでいる仕事にはずみがついたとうれしかった。

目論んでいる仕事とは、古本屋生活の最後、映画資料専門店の最後に、今まで出せずにいた自家目録を出してみたい、それも文学人間である自分にとって一番興味のある肉筆にしぼり、手紙、原稿、署名本など、わが国の主だった映画人の肉筆を網羅した特集の形でという、壮大な野望だ。故に本誌誌上目録を二〇一三年に切り上げ、一五年に記念本『一頁のなかの劇場』を仕上げてからは、肉筆に的をしぼりコツコツと、すぐに売り出すつもりもないものを蒐集につとめてきた。

今回の一通百万を超える小津書簡もその目録の目玉品の一つのつもりで、他にも黒澤明の未映画化作品の原稿揃いや、内田吐夢の本人使用書込入り台本の束や、寺山修司の舞台台本の原稿揃いなど、大物を目にするたびに百万を超える高額さもものかは買い込んできた。なにせ買うばかりで売らないのだから当然わが家の台所は常に火の車、支払いに追われる日々だったが、おかげで珍しいもの貴重なものをかなりの割合で蒐めることができた。


6月号 6月16日発売 定価850円(送料79円) ※ご注文はメールまたは電話、FAXで。

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