「日本古書通信」9月号(89巻9号)9月13日発売
主要目次
特集 店舗のある古本屋一覧2024・(2) 関東・甲信越(東京を除く)
川島幸希 「署名本の世界」みたび15 石川淳『普賢』横光利一宛
丹尾安典 一寸随想4『放庵歌集』のことなど
古川富章 HAIKUの多行表現史(1)
茅原 健 私的回想―私家版歌集二題
森下紀夫 小田光雄氏追悼 尊敬してしまったのだ
竹居明男 北原白秋と正倉院―詩集『海豹と雲』初版の装釘をめぐる推理
真田幸治 小村雪岱舞台装置目録5
北原尚彦 リレー連載「ミステリ懐旧三面鏡」36〈『推理文壇戦後史』のキキメ巻〉
小林信行 平田禿木をめぐる人々―鶴田久作(5)
高木浩明 古活字探偵事件帖21 遠藤宗務と『拾芥抄』
田坂憲二 吉井勇の読書生活21 里見弴を読む(下)
石川 透 奈良絵本・絵巻の研究と収集60山中常盤
小田光雄 古本屋散策270(遺稿)及び連載1、100回目の再録
その他
小田光雄氏追悼 尊敬してしまったのだ(森下紀夫)より
2年半前〈2022年の春〉頃だろうか、小田さんは電話口で言った。「仕事に集中したいこともあって、もう晩酌はやらないことにしたよ」。その時、私は大きく私に舵を切った。―意思の強い人は違うな。自分など、とても真似のできることではない。
尊敬してしまったのだ。
小田さんと函南にあるぬる湯温泉にはよく通った。二人でお銚子を七、八本空けた後、スナックへ行き、部屋に戻ってから小田さんの選んだ地酒の四合瓶を空けた。
函南が定例の場所になったのは、東海道線で磐田と東京の中間点だったからだ。小田さんによれば、時間も、距離も、料金も、それぞれの住まいから半分であるという。平等と言うことだ。
その彼が日本酒を止めるという。元ガン患者の私は体験に照らして、強く病院での検査をすすめるべきであった。酒が美味くないとも言った。その言葉をもっと重く見なければならなかった。悔やまれてならないのは、私はそれでも体調の変化を別のところに求めた。
電話でもっぱら愚痴を言うのは私と決まっていた。愚痴の内容に困ることはない。愚痴はあちこちに飛ぶが、小田さんは上手に受け止めてくれた。
9月号 9月13日発売 定価850円(送料79円) ※ご注文はメールまたは電話、FAXで。
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