活字をはみだすもの(第26回)開催のお知らせ
平素は格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます。
さて、この度当店では前回に引き続き、近代文学特別講座「活字をはみだすもの」(第26回)を開催する運びとなりました。日本近代文学を専門とされる諸先生方に、当店所蔵の自筆資料を研究素材として利用して頂き、そこからどんな事柄がわかり、どんな可能性が見えてくるのかを解き明かして頂きます。実物を間近で見られるまたとない機会ですので、何卒奮ってご参加下さいますよう、ご案内申し上げます。
2025.10.31 web公開スタートしました。
【募集人数】 各回10人程度、延べ40人の募集となります。
【講座の内容】
■編集者・島崎藤村 ―「藤村童話叢書」の出版資料から見る
■講師 大木志門先生 11月22日(土) 13:00~14:00
最初の長篇小説『破戒』(明治39年)を自ら興した「緑蔭叢書」の第1編として世に送り出したことで知られる島崎藤村は、雑誌や叢書など生涯にわたり数々の出版活動に関わり続けた作家でした。晩年の「藤村童話叢書」(昭和15―16年、研究社)はその最後の事業であり、この時の出版資料には藤村の様々な苦心の跡が残されています。そのような「編集者」藤村の姿を資料から明らかにしてゆきたいと思います。
〔講師紹介〕東海大学教授、1974年生。自然主義文学・私小説を中心に研究。主な著書・編著に『徳田秋聲と「文学」』(鼎書房、2021)、『島崎藤村短篇集』(岩波文庫、2022)、『高村光太郎作品アンソロジー戦争への道、戦争からの道』(田畑書店、2025)など。
■耽美とミステリーの懸け橋 ―翻訳家・谷崎潤一郎の苦心
■講師 河野龍也先生 11月22日(土) 15:00~16:00
「阿片溺愛者の告白」に代表されるトマス・ド・クインシーの著作は、オスカー・ワイルドと並んで、谷崎潤一郎・佐藤春夫ら大正期の耽美派文学に対する偉大な教科書の役割を果たしました。昭和初期のエロ・グロ・ナンセンスの時代にも脚光を浴び、谷崎は「芸術の一種として見たる殺人に就いて」(『犯罪科学』昭和6年3月~6月未完)を自ら翻訳しています。耽美とミステリーを架橋した名訳の舞台裏の苦心を、自筆の訳稿から探ります。
〔講師紹介〕東京大学准教授、1976年生。佐藤春夫を中心に、美術と文学ジャンルの交流や作家の異文化理解に関心がある。著書に『佐藤春夫と大正日本の感性』(鼎書房、2019)、編著に『知られざる佐藤春夫の軌跡』(武蔵野書院、2022)、『佐藤春夫読本』(勉誠出版、2015)など。
■作家と編集者 ―谷崎潤一郎・川端康成の書簡を通して
■講師 中澤弥先生 11月29日(土) 13:00~14:00
作家と編集者の関係は、作品の成り立ちにとって、時に芸術的に大きな役割を果たすことは知られている。その一方で、原稿料や営業上の思惑などの要因をめぐって作者と出版社の世俗的なせめぎ合いが行われる場でもある。今回は、谷崎潤一郎・川端康成と改造社の編集者の間で交わされた書簡を取り上げ、原稿料や題名のアピール度、後輩作家の原稿売り込みなど、どちらかといえば世俗的現場を垣間見ていきたい。
〔講師紹介〕多摩大学客員教授、1959年生。文学と美術・映画などとの交流を主な研究テーマとする。また、横光利一など租界都市上海における日本人作家の活動にも興味を持つ。
■芥川龍之介「滝田樗陰宛書簡」を読む ―作品本文の改稿を伝える手紙
■講師 庄司達也先生 11月29日(土) 15:00~16:00
芥川龍之介は、作品の完成に並々ならぬ努力を傾けた作家として知られています。彼は、原稿を送った後であっても、間に合えばその訂正を厭わず求めました。本書簡はその一例として位置づけられるものです。編集者との遣り取りを通して、作品「秋」の創作の現場を覗いて見ましょう。
〔講師紹介〕横浜市立大学教授、1961年生。芥川龍之介の〈人〉と〈文学〉を主たる研究テーマとし、出版メディアと作家、読者の関係にも関心を持つ。また、作家が聴いた音楽を蓄音機とSPレコードで再現するレコード・コンサートを企画・開催。著書に『100年読み継がれる名作 芥川龍之介短編集』(監修、世界文化社、2024)など。
【会費】無料
【会場】八木書店古書部 三階催事場
【主催】八木書店古書部 (担当八木乾二・小沼貴裕)
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-1-7 (靖国通り沿い・三省堂〔工事中〕並び)
営業時間:10:00~18:00 定休:日祝
TEL 03-3291-8221 FAX 03-3291-8223
https://catalogue.books-yagi.co.jp/
mailto:kosyo@books-yagi.co.jp
【参加申込みにつきまして】
konuma.yagibookstore@gmail.com 宛に、お名前、緊急連絡先、参加希望の回 をお知らせください。
随時ご返事を差し上げますが、業務の都合により、数日間のご猶予を頂くことがあります。
定員超過の場合は先着順とさせていただきます。
また発熱、咳など体調に不安がある方は、参加をご遠慮いただく場合がありますのでご了承ください。
【各講座の予約状況】
■編集者・島崎藤村 大木志門先生
■11月22日(土) 13:00~14:00
※満員締切となりました。(2025.11.11)
■耽美とミステリーの懸け橋 河野龍也先生
■11月22日(土) 15:00~16:00
※机周り満席です。椅子のみの席に空きあります。(2025.11.11)
■作家と編集者 中澤弥先生
■11月29日(土) 13:00~14:00
※満員締切となりました。(2025.11.12)
■芥川龍之介「滝田樗陰宛書簡」を読む 庄司達也先生
◆ 11月29日(土) 15:00~16:00
※机周り満席です。椅子のみの席に空きあります。(2025.11.11)
【FAQ】
Q なぜこのような会を始めたのですか。
A 平成の初めの頃までは、年末になると文学館や大学図書館の担当者の方々が神保町にいらっしゃり、いろいろ品物を見て回られたものです。担当者の方々にとっては購入品以外の品物を見るよい機会であり、古書業者の側では現場の直接の要望を聞く絶好のチャンスでした。経費節減・支出削減の時流から次第にそのような習慣はなくなってしまいましたが、これではいけないと、ある先生が仰ったのが契機となり、現物を用いた勉強会のような集まりが生まれました。そのコンセプトは年々変化し、今では日本の近代文学に関連した一次資料に興味を持つ方々の緩やかな集まりとなり、半年に一度「物」と「活字」をつきあわせて「活字をはみだすもの」を探すようになりました。はみだしたものゆえ、結論に至らないこともありますが、思考過程と可能性を愉しんでいただければ幸いです。
Q 今までの参加者はどのような方々でしたか。
A 基本的に大学生を想定した講座内容となっておりますが、今まで参加されたお客様は、小学生から八十代の研究者まで、幅広い年齢層の方々です。
Q 大学の授業のように、先生方から指されることはありますか。
A 研究者や専門家の方々にプロのご意見を伺うことはありますが、学校の授業のように講座内容についての知識を確認することはありません。
Q 事前に作品を読んでおいたほうがよいでしょうか。
A 作家や作品についての知識は多い方が愉しめますが、当講座は「物」と「活字」をつきあわせて「活字をはみだすもの」を探すことがコンセプトですので、端的には「物」を見ないと始まらない部分があり、厳密な予習は難しいように思われます。
Q 一講座あたりの参加人数が少ないのはどうしてですか。
A コンセプトに「物」を見ることが含まれるため、どうしても大人数に対応できません。講座机のまわりに十人程度、壁際の椅子のみの席に五人程度の人数で締め切らせていただきます。
※ご意見、ご質問ありましたら konuma.yagibookstore@gmail.com までお知らせください。




